データを測って記録して、愛犬の「いつも」の健康状態を把握しよう[獣医師アドバイス]

愛犬の体重や食欲、体温など、「いつも」の様子をしっかり把握できていますか?犬は人の言葉で不調を伝えることはできません。愛犬の健康を守るためには、いつも側にいる飼い主さんが普段の健康状態をしっかり把握しておくことが大切です。愛犬の健康管理に役立つさまざまな健康データの、自宅での「測り(量り)方」をご紹介します。

月に1〜2回は体重測定を!

肥満は「万病の元」といわれるとおり、太りすぎは体のいろいろな部分に負担をかけます。また、食事の内容や量を変えていないのに、体重が減少するときも何らかの病気が疑われます。

愛犬の体重測定は月1〜2回を目安に定期的に行いましょう。体重計に犬を乗せて「マテ」ができれば、そのまま量ることができます。動いてしまう場合は、飼い主さんが犬を抱きかかえて一緒に体重を量り、次に飼い主さんだけの体重を量って引き算すれば、愛犬の体重がわかります。大型犬で家庭用の体重計に乗せることが困難な場合は、動物病院で量ってもらいましょう。

体重が安定していても、太りすぎたりやせすぎたりしている状態では健康とはいえないので、体型もしっかり確認してください。適度な脂肪がついていて肋骨に触ることができる/上から見たときに腰が適度にくびれている/横から見たときにお腹がたるまずに引き締まっている状態が正常な体型の目安です。

目分量ではなくフードは計量しよう

毎日与える食事の量が一定でなければ、正確な体重管理はできません。ドッグフードは目分量ではなく、計量カップや計量スプーンなどを使ってきちんと量って与えましょう。デジタルスケールで重さを量れば、さらに正確に与えることができます。

ドッグフードは種類によって粒の重さや大きさ、含まれるエネルギー量や給与量は異なるので、フードの種類を変更したときには必ず基本の分量を量り直してください。 また食事だけでなく、おやつの量もきちんと管理しましょう。

普段の飲水量もしっかり確認

糖尿病や慢性腎臓病、副腎皮質機能亢進症など、水を飲む量とおしっこの量が増える「多飲多尿」の症状が現れる病気もあります。暑いときやたくさん運動した後には水を飲む量が増えますが、犬の1日の飲水量の正常な範囲は、缶詰フードを食べている場合は少なめ、ドライフードを食べている場合は多めで、体重1kgあたり20〜90mL程度が目安とされていますが、この量を超える場合は「多飲」と判断されます。

飲水量も定期的に量って把握しておくことをおすすめします。計量カップで水を量ってから水飲み容器に入れ、24時間後に残っていた水を再び計量して引き算すれば、1日のおおよその飲水量がわかります。

バイタルサインをチェックしよう

「呼吸」「心拍(脈拍)」「体温」は「バイタルサイン(生命徴候)」と呼ばれ、今の健康状態を把握する基本的な数値情報です。バイタルサインの変化が、命に関わる重要な情報を示していることも多いので、自宅でチェックする方法を覚えておきましょう。

●呼吸数を測る 
犬の正常な呼吸数の目安は1分間に10〜35回です。
犬が安静にしているときや寝ているときなどに、胸が上下する動きを数えます。「上下の動き」を1回の呼吸としてカウントし、10秒間数えて6倍するか、15秒間数えて4倍することで1分間の呼吸数がわかります。

●心拍数を測る
心拍数とは1分間に心臓が拍動する回数のことです。犬の正常な心拍数は、小型犬で1分間に80〜120回、大型犬はややゆっくりめで60〜80回です。また子犬の心拍数は成犬の約2倍とされ、220回以下であれば正常範囲とされます。

心拍数は動物病院では聴診器で測りますが、家庭では脈拍を測るとよいでしょう。人では手首で脈拍を計りますが、犬の場合は後ろ足の内側のつけ根のあたりにある大腿動脈に指を当ててトクトクという拍動を数えます。10秒間数えて6倍するか、15秒間数えて4倍することで1分間の心拍数を測ることができます。

●体温を測る
犬の平熱は人よりも高くて38〜39℃で、子犬や小型犬ではやや高め、大型犬や高齢犬では低めです。平熱よりも1℃以上高ければ、熱がある状態だと考えられます。

動物病院の診察台の上では興奮して体温が高めになるので、普段の平熱を知るには家庭で測れるようにしておくとよいでしょう。犬の体温は肛門に体温計を入れて直腸温を測ります。体温計の先端にオリーブオイルやワセリンを塗ると挿入しやすくなります。シッポのつけ根を上に持ち上げると肛門が少し開くので、体温計の先2〜3cm程度入れて測定時間を待ちます。デジタル体温計を犬用に用意しておきましょう。耳の穴の中に入れて測るタイプの体温計や、非接触型の体温計もあります。

測った数値は記録しておこう

普段の健康な状態のデータを蓄積しておくことは、病気の早期発見の重要な手がかりになります。毎回の条件を揃えるために、計測はなるべく同じ時間帯に行います。愛犬の健康状態の指標となるこれらのデータ測定は月1回を目安に定期的に行い、結果をきちんと記録しておきましょう。

(監修:石田卓夫先生)