犬の呼吸が速かったり、息が荒かったり、いつもと違うと感じたら早く動物病院へ[獣医師アドバイス]

犬が緊張しているときや運動後にハァハァとあえぎ呼吸(パンティング)をするのは、ごく自然な生理現象です。しかし、そうした原因がないのに、犬の呼吸が速かったり、息が荒かったりするときは、何か病気のサインかもしれません。考えられる病気について見ていきましょう。

「鼻炎」で鼻づまり

鼻炎は、細菌、真菌、ウイルス感染やアレルギーなどによって鼻の内部に炎症が起きるもので、くしゃみや鼻水などの症状がみられます。重症化すると、鼻粘膜が腫れて鼻づまりを起こし、呼吸がしづらくなります。

胸水が溜まるとさらに苦しくなる「呼吸器の病気」

気管支や肺などの呼吸器に炎症が起きているときは、スムーズに息ができなくなるため、呼吸の回数を増やして酸素を取り込もうとして、呼吸が速くなります。
また肺炎や肺がんなどで、炎症が肺を包む胸膜まで及ぶと、胸壁と肺などの臓器の間(胸膜腔)に水が溜まり(胸水)、肺を圧迫してさらに呼吸を困難にします。

ペチャ鼻犬種は要注意!「短頭種気道症候群」

パグやフレンチブルドッグ、ボストンテリアなどの短頭種がかかりやすい呼吸器系疾患を総称して、短頭種気道症候群と呼びます。
鼻の穴が狭く呼吸がしづらい「外鼻腔狭窄症」、軟口蓋(上あごの軟らかいヒダ)が長く垂れ下がって気道をふさぐ「軟口蓋過長症」、気管が押しつぶされたように変形する「気管虚脱」などで、激しくいびきをかいたり、ガーガーというあひるの鳴き声のような咳をしたり、苦しそうな息づかいをするようになります。

肺水腫や胸水が心配な「心臓病」

犬によくみられる僧帽弁閉鎖不全症や心筋症など、心臓病でも呼吸が荒くなります。
病気が進行するにつれて、心臓の力が弱まり、心臓から血液を送り出せなくなっていきます。すると血液が心臓に溜まり、溜まった血液は肺へと流れ、肺の毛細血管から水分が漏れ出て肺の中に溜まります。これが肺水腫と呼ばれる状態で、酸素と二酸化炭素の交換がうまく行かず、息切れや呼吸困難を引き起こします。また、胸水が溜まって肺を圧迫し、呼吸がしづらくなることもあります。
フィラリア(犬糸状虫)の心臓への寄生によっても、同様に肺水腫や胸水を起こすことがあります。

緊急対応が必要な「熱中症」

人のように汗をかけない犬は、舌を出してハァハァとパンティングによって体温調整を行います。犬の息づかいが荒くても、自分で水を飲みに行ったり、冷たい床で体を冷やしたりしていれば大丈夫ですが、ぐったりして、ひたすら荒い呼吸をしていたり、大量のよだれが出ているときは、熱中症が疑われる危険な状態です。

どこかに「痛み」がある場合も

骨折や外傷、ひどい腹痛など、体のどこかに痛みがある場合も呼吸が速くなります。

「発熱」時も息が荒くなる

感染症によって発熱しているときも、熱を放出しようとして呼吸が荒くなることがあります。

愛犬の正常時の呼吸数を把握しておこう

呼吸が速くなったり、息が荒くなる症状が出る病気はたくさんあります。愛犬の正常時の呼吸数を把握しておくと、呼吸状態の異常に気づきやすくなるかもしれません。愛犬が寝ているときに、1分間、胸の上下運動の回数を測定しておきましょう。
呼吸に異常をきたす病気のなかには、熱中症のように緊急性の高いものもあれば、心臓病や肺炎などの重篤なものもあります。愛犬の呼吸に違和感を感じたら、できるだけ早く動物病院で診てもらいましょう。

(監修:石田卓夫先生)