猫も肥満は大敵。食欲が異常にありすぎて太る場合は病気の可能性も！［獣医師アドバイス］

「肥満は万病の元」といわれるように、太りすぎれば体に大きな負担がかかり健康の大敵です。また、食欲があることは健康だと思いがちですが、異常に食欲が出たり、太ったりする場合は病気が原因かもしれません。

太っている状態とは？　～肥満の定義～

室内飼育の猫は、運動不足から太りやすくなります。飼い主さんはちょうどいい体型だと思っていても、多くの猫が太り気味の傾向にあるともいわれています。基本的に「体を触ると脂肪に覆われていて肋骨や腰骨が確認できない」「上から見た時に首や腰のくびれが確認できない」状態にあるときは太りすぎです。 肥満とは、適正体重（理想体重）よりも15％以上オーバーしている状態をいいます。適正体重は体型や体格によって個体差があるので、獣医師に直接見てもらい確認しておくとよいでしょう。
肥満の原因はカロリーオーバーであり、消費エネルギーよりも摂取エネルギーのほうが大幅に上回ることで起こります。体が太って大きくなれば、大きな体を維持するためにさらにたくさん食べるようになります。

食欲が増加する原因は？

食べる量や回数が増えることを「多食」といいます。食欲が増える原因には生理的なものと病気によるものがあります。

●季節によるもの
寒い冬に備えて皮下脂肪を蓄えるため、秋から冬にかけて食欲が増します。

●不妊・去勢手術の影響
メスもオスもホルモンバランスが変化して食欲が増したり、代謝が落ちるために太りやすくなったりします。

●嗜好性によるもの
単純にフードを替えたことで嗜好性が高まって食欲が増すこともあります。

●クッシング症状群（副腎皮質機能亢進症）
猫ではあまり多くはありませんが、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌される病気です。食欲が増加して、ビール腹のようにお腹がふくらみます。斑状の脱毛や皮膚が破れるなどの症状がみられます。

●糖尿病
糖尿病を発症すると食欲が増してよく食べるようになりますが、症状が進むとやせていきます。水を飲む量が増え、おしっこもたくさんするようになります。

●先端巨大症
脳下垂体に腫瘍ができることで成長ホルモンの分泌が過剰になり、食欲が増します。頭部が大きくなるなどの症候がみられ、糖尿病を併発していることもあります。

●脳の障害
脳炎や脳腫瘍などによって満腹中枢が麻痺してコントロールがきかなくなり、食欲が異常に増えることがあります。認知症など脳の機能低下によって異常に食欲が増すこともあります。

●薬による副作用
病気の治療を行っている場合、ステロイド薬や抗ヒスタミン薬などの副作用として、食欲が増して太ることもあります。

急激な体重増加は病気のサイン

病的な食欲増進による肥満か、単に食べ過ぎによるものなのかは、他の症状がないかを合わせて確認します。元気がない、むくんでいる、お腹だけ張っている、急激に体重が増えた場合には、速やかに動物病院を受診してください。また、食べ過ぎによる肥満の場合も、心臓病や関節炎、糖尿病など、さまざまな病気の引き金になります。猫の食べ過ぎは、すなわち飼い主さんの与えすぎですので、食事管理はしっかりと行いましょう。すでに肥満になっている場合は、無理なく適正体重に近づけるよう、動物病院に相談して減量指導を受けることをおすすめします。

（監修：石田卓夫先生）