犬の高齢は何歳から?シニア期の健康管理と生活ケア[獣医師アドバイス]
犬の長寿化が進み、今や平均寿命も14歳を超えています。愛犬には元気で長生きしてほしいと思うのは、すべての飼い主さん共通の願いです。加齢とともに犬にはどんな変化が現れ、どんな世話が必要になるのか。シニア期の健康管理や日常生活のケアのポイントについて見ていきましょう。
犬の「シニア」は何歳から?
老化のスピードは犬種差(大型犬は小型犬より寿命が短く、老化が速い)や個体差があり、何歳からが高齢と定義するのは難しいのですが、一般に「7歳」からがシニア期とされることが多いです。確かに小型犬では7歳はシニアの入り口で、体に変化が出始める節目の年齢です。しかし、見た目はまだまだ若く、いわば「中年期」。大型犬では本当にシニア期に入ります。
小型犬で本格的な「高齢期」が始まるのは、11〜12歳頃からでしょう。被毛がパサつく、白髪が増えた、目が白く濁ってきた、歩くときにもたつく、性格が頑固になった・・・など、老化のサインが目立つようになり、病気も増えてきます。大型犬ではこの歳になると本当の高齢動物です。
シニアの入り口は「肥満」に注意!
シニアの入り口で最も気をつけたいのは、肥満です。7歳頃から基礎代謝が低下してきて、それまでと同じ食事内容だと、太りやすくなります。肥満は万病の元で、関節疾患や心臓病、腫瘍など、加齢とともに増えてくるさまざまな病気の引き金になります。この時期、愛犬を肥満にさせないことが、その後を長く元気で過ごすための一番のポイント。食事管理と適度な運動で、適正体重を維持しましょう。
老化は「足腰」からやってくる
犬の老化は足腰からやってきます。歩くスピードが遅くなった、少しの段差でつまずく、お尻が小さくなった・・・などから、老化を実感することも多いのではないでしょうか。しかし、足腰が弱ったからと歩かせることをやめれば、ますます歩けなくなります。シニアになっても、お散歩を欠かさず筋力を維持することが、その後の寝たきり防止につながります。
良質な「タンパク質」をしっかり摂取
高齢期になると、中年期から一転して、食が細くなり、やせてくる傾向があります。トッピングで食欲をそそる工夫するなど、良質なタンパク質をしっかり摂取できる食事で、体力をキープすることが大切です。
かつてのシニア用の食事は肝臓や腎臓への負担を軽くするため、脂質やタンパク質を控えていましたが、最近の研究では、シニア期こそ筋肉や内臓機能の維持にタンパク質の十分な摂取が必要という考え方に変わってきています。タンパク質は本当に慢性腎臓病になったところで制限すればよいのです。
「生活環境」の見直しやこまめな「ケア」も
生活環境の見直しも必要です。床はすべり止めのカーペットを敷く。玄関の段差やソファへの上り下りが危うい場合は、踏み台やスロープを用意する。食事のときは、足や首に負担をかけないよう、食器を台の上に置く・・・などの配慮を。
また足裏の毛が伸びていると、床ですべりやすくなります。運動量が減ったシニア犬は爪が伸びやすく、引っかかったりして危険です。こまめなケアを忘れずに。
「認知症」対策は、スキンシップと早期発見で
老化が進めば、認知症になることも。昼夜逆転、夜鳴き、ぐるぐる旋回する・・・など、特有の症状が出てきます。根本的な治療法はありませんが、早く気づいて対処すれば、ある程度進行を抑えられます。単調な生活は認知症リスクを高めます。お散歩コースを変えてみたり、愛犬に話しかけたり遊んであげたり、生活に刺激を取り入れることが予防につながります。
7歳以上になったら、年2回の「定期健診」を
年をとれば、犬も病気にかかりやすくなります。シニア期に多い病気としては、歯周病、僧帽弁閉鎖不全症、内分泌系疾患(糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群など)、関節疾患や椎間板ヘルニア、腫瘍なども増えてきます。
犬は人より病気の進行スピードが速いので、早期発見が何より大切です。7歳以上になったら、年2回の定期健診を受けるようにしましょう。
(監修:石田卓夫先生)