6〜7歳は「プレシニア期」。快適なシニア期を迎えるために知っておきたい老化のサインとケア[獣医師アドバイス]
いつまでも小さくてかわいい猫も、当然のことながら年を重ねて老いていきます。猫の6〜7歳はまだまだ元気いっぱいですが、この時期からのケアがやがて訪れる「シニア期」の暮らしを大きく左右します。
猫の「シニア期」って何歳から?
猫の平均寿命はおよそ15歳で、今では20歳を超えるのも決して珍しいことではありません。本格的な「高齢猫」となるのは12〜13歳頃からですが、一般的に7歳から「シニア期」と呼ばれます。猫の7歳を人の年齢に換算してみると44歳くらいですから、「シニア(=高齢)」と呼ぶには早すぎると感じるかもしれません。けれども、人でもこのくらいの年齢になると、白髪が出てきたり、老眼になったりと老いの兆候が見られ、生活習慣病も気になり始める頃ですから、猫でもそろそろ老いが始まる年齢にさしかかったというわけです。
6〜7歳は「プレシニア期」。快適なシニア期を迎える準備期間
最近では、シニア期よりも少し手前の6〜7歳くらいを、「プレシニア期」と呼ぶことがあります。老いが始まる前の健康で元気なこの時期から生活習慣を見直して、健康管理もしっかり行い、快適にシニア期を迎える準備をしておく期間として捉えられています。
老化のサインに敏感になろう
プレシニア期の猫はまだまだ若々しく、目立った老化のサインも感じられません。猫の老化のサインがはっきり出てくるのは10歳くらいからですが、老化は突然やってくるわけではなく、その前からじわじわと始まっています。また、7歳頃からはいろいろな病気の症状も出やすくなります。いずれ現れる老化のサインがわかっていれば変化を気にかけることができます。
【体の変化】
●毛づやが悪くなる。白髪が出てくる
毛づくろいをあまりしなくなり、毛づやがなくなってパサつきます。口元や鼻先、目のまわりから白い毛が出始めます。
●フケが増える/体にイボやシミができやすくなる
皮膚の水分や皮脂の分泌量が減少して皮膚が乾燥するので、フケが増えることがあります。また皮膚の老化でイボやシミができやすくなります。
●太りやすくなる
基礎代謝の低下により、太りやすくなります。
●爪が厚くなる
爪をあまりとがなくなるため、古いさやがはがれずに爪が厚くなります。爪が伸びて巻き爪になることもあります。
●口臭がきつくなる
デンタルケアを行っていないと、歯垢や歯石がたまって歯周病になります。
【行動の変化】
●高い所に登らなくなる
筋力の低下や関節の痛みなどが原因で、高い所への上り下りが負担になることがあります。
●寝ている時間が長くなる
不活発になり、これまで以上に寝ている時間が長くなります。
●呼んでも反応しない時がある
聴力が低下して、呼びかけに対する反応が鈍くなることがあります。
●爪とぎの回数が減る
関節の痛みなどで、爪もあまりとがなくなります。
●あまり毛づくろいをしない
体の柔軟性が低下して、こまめな毛づくろいができなくなります。
**
このように、年を取ると体や行動にさまざまな変化が見られますが、「年のせい」だけではなく、痛みや病気のサインのこともあります。老化によるものなのか病気によるものなのかを知るためにも、気になる変化が見られたら動物病院に相談してください。
プレシニア期のケアがその後の健康を左右する
プレシニア期からしっかりケアを始めれば、老化の進行を遅らせて健康寿命を延ばすことができます。
●デンタルケアをしっかり行う
毎日の歯磨きを習慣にして、歯周病や口臭の原因となる歯石や歯垢をためないようにしましょう。歯石がたまっている場合には全身麻酔をかけて歯石除去を行う必要があります。高齢になるほど麻酔のリスクが高まるため、健康状態に問題のないこの時期に歯石除去を行っておくとよいでしょう。
●食事の内容を見直す
徐々に基礎代謝が落ちて太りやすくなるので、シニア期には年齢に見合ったカロリーや栄養バランスが調整されているシニアフードがおすすめです。どんなフードがあるのか情報を集めて、切り替えの準備をしましょう。
●脳に刺激を与える生活を提供しよう
猫は認知症にならないといわれていましたが、犬にくらべて症状がわかりにくいだけで、発症することもあります。脳に適度な刺激を与えることは認知症の予防になるので、オモチャでたっぷり遊ばせたり、窓の外の景色を見せたりしましょう。飼い主とコミュニケーションをしっかり取ることも大切です。
●オシッコの量と飲水量をしっかりチェック
猫に多い【慢性腎臓病】は7〜10歳頃から増え始めます。オシッコの量と水を飲む量が増えるのがこの病気の重大なサイン。早期発見のために、量の変化をこまめに観察しましょう。
●健康診断をきちんと受けよう
高齢になるといろいろな病気にかかりやすくなります。元気なプレシニア期に健康診断で健康な時の基準となる検査データがあれば、その後の変化の参考値になります。年に1回は必ず健康診断を受けましょう。
(監修:石田卓夫先生)