頭を振る、首をかしげるときは耳や脳のトラブルの疑いが!必ず動物病院を受診しよう[獣医師アドバイス]

犬が首をかしげて飼い主さんの顔をじっと見つめるのは、なんともかわいらしいしぐさの一つです。犬は音に敏感なので、頭を傾けて音を聞き取ろうと耳を傾けます。けれども、ずっと頭を傾けていたり、頭を左右に振ったりしている場合には、耳の病気や脳の障害の疑いがあります。

かゆがるしぐさもみられたら耳の違和感

頭を左右に激しく降るとき、まず疑われるのは耳の中の違和感です。
ごみや草の実、虫などの異物が耳の中に入ったときには、突然頭を激しく振ってそれを外に出そうとします。また、普段から耳をしょっちゅう振っているときには、耳ダニ(ミミヒゼンダニ)の寄生、細菌やマラセチアなどの真菌に感染して外耳炎を起こしている可能性があります。後ろ足で耳を掻くしぐさも同時にみられ、かゆみが激しいときには床や壁に耳をこすりつけることもあります。中耳炎を起こしているときにも、不快感から頭を振るしぐさがみられます。

歩き方がふらつくときは脳の病気の疑い

頭を振りながら歩き方がふらついていたり、頭をずっと傾けていたりする場合は、神経や脳に何らかの障害が起きている可能性があります。体の平衡感覚は耳の奥にある内耳の前庭という部分が司っていますが、この部分に異常を来す「前庭障害」が起こると、首をかしげる、頭を振るなどのしぐさがみられ、体が傾いてよろけたり、同じ場所をぐるぐる回ったりなどの行動をとるようになります。前庭障害の原因はさまざまですが、高齢犬に起こりやすいといわれています。このほか、「脳腫瘍」や「脳炎」、外傷による「脳の損傷」などによっても、頭が傾いたりふらついたりします。

観察のポイントはかゆみとバランス

頭を激しく振る、首をかしげるときには次のポイントをチェックし、獣医師に伝えてください。

●耳のかゆみや汚れがあるか
耳の後ろを激しく掻く場合には耳の病気が考えられます。耳の中を確認して、乾燥した黒い耳アカがみられたら耳ダニが寄生しています。ジュクジュクと湿ったクリーム色や茶色の耳アカの場合は外耳炎や中耳炎の可能性があります。

●体のバランスが保てているか
耳の中の汚れや、かゆがるしぐさがみられず、体のバランスが保てずに歩くとふらつくときには脳の病気の疑いがあります。

●首をかしげている方向はどちらか
脳の異常の場合、頭をかしげるのは左右どちらかの方向になります。首を傾ける方向によって異常の部位が変わってくるので観察しておきましょう。耳の病気でも異常が起きているほうの耳だけ、傾いていることがあります。

●瞳孔は正常か?
脳のトラブルでは瞳孔が左右に小刻みに揺れる症状がみられることもあります。また、片方の瞳孔だけが極端に縮小する「縮瞳」という症状が現れることもあります。目の動きも確認してください。

日頃から耳のお手入れをしっかりと

普段から耳に汚れがないか、きちんとチェックしておきましょう。特に垂れ耳の犬は外耳炎などのトラブルが起こりやすくなります。耳の病気の予防のためにも、耳の中の毛を抜いて通気性をよくする、こまめに汚れを拭き取るなど、耳のケアをしっかり行うことが大切です。

異常があれば速やかに動物病院へ

外耳炎を起こしたり、耳ダニが寄生しているときには、自宅で耳掃除をしているだけでは症状は改善しません。耳ダニによる炎症や外耳炎は放置しておくと、中耳や内耳にも影響を及ぼし、前庭障害の原因となることもありますので、耳の中がひどく汚れていたりかゆがったり、嫌なニオイがするときには必ず動物病院でしっかりと治療を受けましょう。
頭を傾けていたりふらついたりするのは、正常な状態ではありません。速やかに動物病院を受診してください。

(監修:石田卓夫先生)