くしゃみやせき、「たかが猫風邪」と油断しないで、動物病院でしっかり治療を![獣医師アドバイス]

人がくり返しくしゃみやせきをするときは、風邪やインフルエンザか、花粉症などの鼻炎を連想する人が多いことでしょう。猫にもいわゆる「猫風邪」やアレルギー性の鼻炎などがあり、くしゃみはその典型的な症状です。猫は普段あまりせきをしないので、せきをしたときには注意が必要です。

そもそもくしゃみとは

くしゃみは鼻粘膜が刺激を受けたときに反射的に起こる生理現象ですが、連続してくしゃみが出る、何日もくしゃみが止まらない、くしゃみやせき以外に鼻水や目やにが出るときは、何らかの病気が疑われます。

「猫風邪」と呼ばれる3つの感染症

くしゃみが出る代表的な病気に「猫風邪」があります。「ウイルス性呼吸器感染症」とも呼ばれ、病名ではなくウイルスによる感染症の総称です。ちなみに、猫の風邪と人の風邪はウイルスがちがうので、基本的にお互いにうつることはありません。

●猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)
ネコヘルペスウイルスによって起こる感染症。急に元気と食欲がなくなり、発熱、激しいくしゃみ、鼻水、結膜炎による目やになどの症状がみられます。通常は1週間くらいで回復しますが、細菌感染を併発すると気管支肺炎や副鼻腔炎となり、抵抗力の弱い子猫では死に至る場合も。

●猫カリシウイルス感染症
猫カリシウイルスによって起こる感染症。くしゃみと鼻水、涙目や目やにのほか、口内炎や舌の潰瘍などができるのが特徴で、よだれも出ます。通常は2週間くらいで回復しますが、肺炎を起こすと死に至ることもあります。

●猫クラミジア感染症
ウイルスでも細菌でもないクラミジアという病原体による感染症で、目やにを伴う結膜炎や角膜炎が特徴で、くしゃみやせきなどの呼吸器症状がみられることもあります。ごくまれに人にも結膜炎が感染することがあります。

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「たかが風邪」ではすまないいろいろなダメージがありますので、動物病院でしっかり治療を受けましょう。猫風邪は重症化すると、回復してもウイルスなどの病原体が体内に残り、普段はなんともなくても免疫力が落ちるとぶり返すことがあります。この3つの感染症にはワクチンがありますので、しっかり予防しておくことをおすすめします。

花粉やハウスダストによるアレルギー性鼻炎も

猫風邪以外では、鼻炎が考えられます。鼻炎の原因としては、細菌感染や真菌の一種によるクリプトコッカス症、花粉やハウスダスト、イエダニなどによるアレルギー性鼻炎もあります。鼻炎が長引いたり重症化したりすると、鼻の奥にある副鼻腔に炎症が広がって副鼻腔炎となり、くしゃみをするたびに膿のような鼻水が出るようになることもあります。

猫がせきをするときは要注意!

猫がせきをするときには四つん這いになってあごを前に突き出すような姿勢になり、「ケーケー」「ケホケホ」という音になるので、吐くしぐさと間違うこともあります。猫は普段あまりせきをしない動物なので、くり返しせきをする場合には速やかに動物病院へ連れていきましょう。運動や興奮したときにせきをするのか安静時にするのか、夜や朝方に出るのかなど、タイミングも観察してください。

「乾いたせき」と「湿ったせき」

●乾いたせき
「ケホケホ」という乾いたせきが出る場合は、のどや気道に炎症がある可能性があります。のどや首を撫でただけでもせきが出たり、せきの後に「カーッ」と吐くようなしぐさがみられることもあります。「猫ウイルス性鼻気管炎」「咽頭炎」「気管支炎」「喘息」など呼吸器系の病気が原因です。

●湿ったせき
「ゼーゼー」という痰を伴った湿ったせきは、重症化して、肺に異常が現れているおそれがあります。慢性気管支炎や肺炎、膿胸、心筋症などによる肺水腫、胸腔内腫瘍などの疑いがあります。

せきのような「逆くしゃみ」

せきともくしゃみとも判断がつきかねるものに、荒い息づかいでしゃくり上げるように、「ブーブー」という連続した大きな音を出す「逆くしゃみ」があります。普通のくしゃみは鼻から空気を押し出しますが、逆くしゃみは鼻から急激に空気を吸い込むために大きな音が出ます。発作のように連続するので驚きますが、逆くしゃみは特に異常がみられないことが多く、気道の中の中咽頭と呼ばれる部分の刺激に対する反応と考えられています。ただし、逆くしゃみがくり返し起こるときには、念のため動物病院で相談しましょう。せきかくしゃみか区別がつかないときには動画を撮っておくと診断の手がかりになります。

(監修:石田卓夫先生)