6〜7歳は「プレシニア期」。元気で長生きするために知っておきたい老化のサインとケア[獣医師アドバイス]

いつまでも元気でかわいい子どものように思える犬も、当然のことながら年を重ねて老いていきます。小型・中型犬の6〜7歳はまだまだ元気いっぱいですが、まもなく訪れる「シニア期」に備えて、意識しておきたい体と行動の変化やケアについて解説します。

犬の「シニア期」って何歳から?

犬の平均寿命は小型犬で14歳、中型犬で13歳、大型犬で10〜12歳くらいが目安です。小型犬にくらべると大型犬のほうが老化も早く、寿命も短くなります。

本格的な「高齢犬」となるのは、犬種や個体差はあるものの、小型・中型犬は11〜12歳頃から、大型犬では7〜9歳頃からですが、一般的に小型・中型犬で7歳頃から、大型犬では5〜6歳頃から「シニア期」と呼ばれます。人の年齢に換算してみると、小型・中型犬の7歳は人の44歳、大型犬の5歳は人の40歳くらいですから、「シニア(=高齢)」と呼ぶには早すぎると感じるかもしれません。けれども、人でもこのくらいの年齢から、白髪が出てきたり、老眼になったりと老いの兆候が見られ、生活習慣病も気になり始める頃。犬でもそろそろ老いが始まる年齢にさしかかったというわけです。

6〜7歳は「プレシニア期」。快適なシニア期を迎える準備期間

最近では、シニア期よりも少し手前、小型・中型犬の6〜7歳、大型犬の5歳くらいを、「プレシニア期」と呼ぶことがあります。老いが始まる前の健康で元気な時期から生活習慣を見直して、健康管理もしっかり行い、快適にシニア期を迎える準備をしておく期間としてとらえられています。

老化のサインに敏感になろう

プレシニア期の犬はまだまだ若々しく、目立った老化のサインも感じられません。しかし、老化はシニア期に入って突然やってくるわけではなく、その前からじわじわと始まっていますし、7歳頃からいろいろな病気の症状も出やすくなります。いずれ現れる老化のサインがわかっていれば変化を気にかけることができます。

【体の変化】

●毛づやが悪くなる。白髪が出てくる
毛色が薄くなったり、毛づやがなくなってパサつきます。口元や鼻先、目のまわりから白い毛が出始めます。

●フケが出増える/体にイボやシミができやすくなる
皮膚の水分や皮脂の分泌量が減少して皮膚が乾燥するので、フケが増えることがあります。また皮膚の老化でイボやシミができやすくなります。

●目が白く濁る
水晶体が白く濁る白内障は、高齢犬に多く見られます。

●太りやすくなる
基礎代謝の低下により太りやすくなります。

●お尻が小さくなる
筋肉が落ちてくるため、お尻のあたりがしぼんで見えます。

●爪が伸びる
運動量が減ると、爪が伸びやすくなり、巻き爪になることもあります。

●口臭がきつくなる
デンタルケアをきちんと行っていないと、歯垢や歯石がたまって歯周病になります。

【行動の変化】

●歩幅が狭くなる
筋力が低下して動作がもたつき、歩幅が狭くなります。

●散歩に行きたがらない/ソファに飛び乗れない
筋力の低下や関節の痛みなどが原因で、歩いたりジャンプしたりすることが負担になってきます。

●寝ている時間が長くなる
不活発になり、寝ている時間が長くなります。

●呼んでも反応しない時がある
聴力が低下して、呼びかけに対する反応が鈍くなることがあります。

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このように、年を取ると体や行動にさまざまな変化が見られますが、「年のせい」だけではなく、痛みや病気のサインのこともあります。老化によるものなのか病気によるものなのかを知るためにも、気になる変化が見られたら動物病院に相談してください。

プレシニア期のケアで健康寿命を延ばそう

プレシニア期からしっかりケアを始めれば、老化の進行を遅らせて健康寿命を延ばすことができます。

●デンタルケアをしっかり行う
毎日の歯磨きを習慣にして、歯周病や口臭の原因となる歯石や歯垢をためないようにしましょう。歯石がたまっている場合には全身麻酔をかけて歯石除去を行う必要があります。高齢になるほど麻酔のリスクが高まるため、健康状態に問題のないこの時期に歯石除去を行っておくとよいでしょう。

●運動や散歩で筋力をつける
将来の「寝たきり予防」のためにも、プレシニア期にしっかりと散歩や運動をして十分に筋力をつけておきましょう。

●食事の内容を検討する
徐々に基礎代謝が落ちて太りやすくなるので、シニア期には年齢に見合ったカロリーや栄養バランスが調整されているシニアフードがおすすめです。どんなフードがあるのか情報を集めて、切り替えの準備をしましょう。

●脳に刺激を与える生活を提供しよう
脳に適度な刺激を与えることは認知症の予防になります。複数の散歩コースを用意して日によって変えたり、コミュニケーションを取りながら「オスワリ」や「マテ」などしつけのおさらいをしたり、コングなどで食べ物探しゲームをするなど、犬にとって楽しい刺激を与えるようにしましょう。

●健康診断をきちんと受けよう
高齢になるといろいろな病気にかかりやすくなります。元気なプレシニア期に健康診断で健康な時の基準となる検査データを知ることで、その後の変化の参考値になります。年に1回は必ず健康診断を受けましょう。

(監修:石田卓夫先生)