猫の喉から聞こえる「ゴロゴロ音」。どんな意味があるの?[獣医師アドバイス]
グルグル〜だったりゴロゴロ〜だったり、猫によって微妙に音が違う喉の音。聞いているだけで、心地よく感じる飼い主さんも多いのではないでしょうか。そもそも猫はなぜ喉を鳴らすのか?その音の正体はまだまだナゾだらけですが、少しずつ研究が進んでいるようです。
メカニズムははっきり解明されていないけれど…
猫が喉を鳴らしているときにそっと首元を触ってみると、細かく振動していることがわかります。猫がどのようにして喉を震わせてゴロゴロ音を出しているかというと、そのしくみには複数の仮説があり、どれが正しいのかははっきりとしていません。
その中で有力な説の一つとされているのが、呼吸の際に喉頭の筋肉が収縮して、空気の流れが断続的に遮られるために発せられる音、というものです。猫が息を吐くときと吸うときとでは異なる周波数を発していることなどがわかってきています。
主には「大好き」「うれしい」など好意的な意味
「愛猫はどんなときに、ゴロゴロ音を鳴らしていますか?」と尋ねたとしたら、主に以下のようなシーンを想像するのではないでしょうか?
●飼い主さんが声をかけたり、なでてあげているとき
●仲のいい同居猫とくっついてリラックスしているとき
●毛布やブランケットなど柔らかいものの上で、足を交互に出して「ふみふみ」しているとき
これらのシーンでは、飼い主さんや同居猫との触れ合いや関わりから、母猫と一緒にいるときのような安心感を得て身を委ねていると考えられます。「大好き」「うれしい」「満足」といった好意的なゴロゴロ音といえるでしょう。
本来、喉から出す音は、授乳中などに子猫が母猫に対して行うコミュニケーションの意味合いがあります。家で暮らす猫は高齢になっても喉を鳴らしますが、おそらくお世話をしてくれる飼い主さんと一緒にいることで、子猫の気分に戻って甘えているのでしょう。
「要求」の意味をもつゴロゴロ音も?
研究による報告のひとつとして、猫が積極的に食べ物を要求するときには、甘えているときと少し違った喉の鳴らし方をするというものがあります。要求の場合のゴロゴロ音には、高周波の声が含まれているのだそうです。「喉を鳴らして甘えていたらおやつをもらえた」といった体験から猫が学習し、飼い主さんに催促したくて繰り返していることがあるのかもしれませんね。
不安なときにも鳴らしている可能性も
猫のゴロゴロ音は、動物病院での診察中にも鳴ることがあるようです。見知らぬ人誰でも大好きなフレンドリーな性格の猫であれば甘えて喉を鳴らすこともあるかもしれませんが、ほとんどの猫にとって見知らぬ場所である動物病院は、「緊張しやすい」環境です。こうしたことから猫のゴロゴロ音は、必ずしもポジティブな場面だけではなく、「不安」なときにも鳴ることがあるといえそうです。
ゴロゴロ音には治癒能力も?
猫が体調を崩していたりケガをしているときにも、喉を鳴らすといった報告があります。その理由もよくわかっていませんが、喉を震わせる振動によって猫が痛みを和らげているのでは?という仮説があります。猫の喉の音は、およそ25Hz前後の低周波。人が低周波を活用した治療で痛みを緩和させるようなことを、猫は自力で行っているのかもしれませんね。
(記事監修:服部 幸先生/東京猫医療センター院長)