ちょうどいいウンチの色や硬さは? 普段からきちんと観察して異常を早期発見[獣医師アドバイス]
「食欲は健康のバロメーター」といいますが、食べた後に出るウンチも、体の中で正常に消化・吸収されているかを知るバロメーターです。ウンチの異常は体のトラブルのサイン。日頃からしっかり観察し、サインを見逃さないようにしてください。
健康なウンチの状態とは?
ウンチを健康の「バロメーター」=指標とするためには、普段のウンチの状態を正しく知っておくことが大切です。健康なウンチはティッシュペーパーでさっとつまめる硬さで、ペットシーツや地面にもほとんどあとは残りません。色は食事の内容によって異なりますが、基本的には茶色です。同じ食事なのにウンチの色やニオイなどがいつもと違う時には要注意です。
いつも違うウンチ、これって病気?
ウンチに適度な硬さがあっても、次のような状態が見られたら何らかの病気が疑われます。ただちに動物病院を受診してください。
●粘液便
表面にドロッとした白っぽい粘液がついているウンチ。直腸や結腸など大腸下部の異常が考えられます。
●粘血便
粘液と血液が混ざったウンチ。大腸下部などから出血している可能性があります。
●血便
血が混ざっていても赤いとは限らず、黒っぽい場合もあります。鮮やかな血が付着しているときには大腸下部からの出血が考えられます。
●タール便
全体的に黒光りしたようなウンチ。胃や小腸などから大量に出血している場合には排泄までに時間がかかるため、血液が変色して黒っぽくなります。
これって便秘? ウンチが出ない原因は?
健康な成犬のウンチの回数の目安は1日1〜3回程度で、食事の回数±1回程度です。犬は猫に比べると便秘になることはさほど多くはないので、いつもと変わらぬ内容・量の食事なのに、ウンチが出ないときには注意が必要です。ウンチが出ない原因には次のことが考えられます。
●直腸の圧迫
直腸がなんらかの原因で圧迫されるとウンチが出にくくなります。オスでは前立腺肥大症、前立腺炎、前立腺腫瘍などで肥大した前立腺が直腸を圧迫することがあります。メスでは子宮蓄膿症や子宮の腫瘍などが原因となることがあります。
●肛門周辺の痛み
肛門囊炎などで肛門のまわりに炎症などの痛みがあると排便を嫌がることがあります。がまんすれば、さらにウンチがお腹の中で硬くなり、出しにくくなります。
●その他の病気
脊髄の病気などの神経障害、椎間板の病気、骨盤の骨折などが原因のことも。後ろ足の骨折など、ふんばれないことで便秘になることもあります。また「甲状腺機能低下症」では代謝が低下することで便秘がちになります。
●誤飲
おもちゃなどなんらかの異物を誤飲したときにも、腸内で詰まってウンチが出なくなります。完全に詰まってしまうと腸閉塞を起こして命に関わることもあります。
●ストレス
過度なストレスがかかると自律神経が乱れて腸の働きが悪くなります。神経質な犬では引っ越しや来客などのストレスが原因で便秘になる場合もあります。
●食事内容・水分
カルシウムが多すぎる食事はウンチが硬くなって出しにくくなります。十分に水を飲まずに体の水分が不足したときにもウンチは硬くなります。
●運動不足
腸の働きが鈍くなり、便秘になります。
病院に行くタイミングは?
ウンチの色、回数、においなどは普段からきちんと観察してください。次のような症状がみられるときには、必ず動物病院に連れていきましょう。
●ウンチに血液や粘液が混ざっている
●硬いウンチが少ししか出ない
●ウンチが出ず、お腹も張っている
●ウンチの姿勢をするのに1日以上ウンチが出ない
●ウンチをするときに痛そうに鳴く
●嘔吐など他の症状がある
●元気・食欲がない
いつもと違うウンチをするときには、病院にウンチを持っていくとよいでしょう。ウンチの異常の影に深刻な病気が隠れていることもあるので、軽く考えずに動物病院に相談してください。
(監修:石田卓夫先生)