愛犬の耳がにおうときは、耳垢の色や量にも注意して![獣医師アドバイス]
愛犬に顔を近づけると、耳がにおう。いつもより耳垢も多い。そんなときは耳にトラブルが起きているのかもしれません。犬は耳の病気になりやすく、とくにジメジメした梅雨や蒸し暑い夏場は発症しやすくなります。耳がにおう原因と対策について見ていきましょう。
耳がにおうとき、最も疑わしいのは外耳炎
耳がにおう、耳が赤い、ベトベトした耳垢が異常に多い、黒っぽい耳垢が出る・・・といった症状が見られ、犬がかゆがったり、耳を気にしてしきりに頭を振ったりする。
そんな様子が見られたら、外耳炎が疑われます。耳は、外耳、中耳、内耳の3つに分かれていますが、耳介から鼓膜の手前まで続く外耳道に炎症が起きる病気です。本来、健康な犬の耳垢は薄い黄色で、ニオイやべたつきもほとんどなく、量も多くありません。悪臭のする耳垢が増えるのは、外耳炎の特徴です。
外耳炎を放置していると、炎症が奥へと広がり、中耳炎や内耳炎を起こすこともあります。
細菌、真菌、耳ダニなど、原因はさまざま
外耳炎を引き起こす原因はさまざまですが、細菌や真菌、耳ダニなどによる感染性のものがよく見られます。
●細菌・マラセチア感染
細菌(ブドウ球菌など)や真菌(マラセチア)は、もともと耳の中の常在菌ですが、犬の抵抗力が落ちていたり、環境が菌の繁殖に適した高温多湿だと、異常に増殖して外耳炎を起こします。細菌感染の場合は、黄色のベトベトした耳垢と膿のニオイが、マラセチア感染では、黒褐色のベトつく耳垢と独特の発酵臭のようなニオイがします。
●耳ダニの寄生
耳ダニ(ミミヒゼンダニ)という小さなダニが外耳道に寄生して起こる外耳炎で、黒っぽい色の乾燥した耳垢が見られ、激しいかゆみがあります。感染力が非常に強いので、多頭飼育の場合は、必ず同居ペットの感染の有無を調べ、もし感染していればいっしょに駆虫しないと、再発をくり返すことになります。
●全身性の皮膚病、異物侵入、腫瘍など
外耳炎の多くは、アトピー性皮膚炎のような全身性の皮膚病に併発して起こるもので、耳の中のべたつきに引き続き、感染が起こります。さらに、虫や植物の種などの異物侵入、腫瘍などからも炎症を起こすことがあります。
外耳炎は慢性化や再発をくり返しやすい
外耳炎の治療は、症状が軽ければ、耳に薬を直接たらす点耳薬が有効です。点耳薬だけで症状をコントロールできないときは、抗生剤やかゆみ止めなどの内服薬を用いたり、耳の洗浄のために通院が必要になることも。耳ダニ感染なら駆虫剤を使います。しかしながら、アトピー性皮膚炎など全身性の皮膚病が原因の場合は、もとの疾患を治療しないと、改善しません。外耳炎は慢性化や再発をくり返しやすい病気で、治療が長期化することもあります。
耳の中がムレやすい犬種や皮脂分泌の多い犬は要注意!
外耳炎になりやすいのは、垂れ耳だったり(ダックスフント、レトリーバー種、コッカー・スパニエルなど)、外耳道に毛が多かったり(プードル、シー・ズー、テリア種など)、耳の中がムレやすい犬種です。また、皮脂分泌の多い犬も細菌や真菌が繁殖しやすく、外耳炎を起こしやすいです。
外耳炎の予防には、耳を清潔に保つことも大切ですが、行き過ぎたお手入れが耳内を傷つけたり、耳垢を奥へ押し込んでしまったりする危険性も。家庭では耳の汚れを軽くふく程度にして、むしろチェックを重視しましょう。健康時の愛犬の耳のニオイや耳垢の状態を把握しておき、気になる変化が見られたら、早めに動物病院へ。
(監修:石田卓夫先生)