猫だって猫なりに、ストレス社会で生きてるんです[獣医師アドバイス]

ふだんはマイペースで自由に過ごしているように見える猫ですが、本来の欲求を満たせなかったり、安心できない環境では、ストレスを溜めやすくなります。猫のストレスの正体や、ストレスサインを知って、できる限り快適に過ごせるように飼い主さんが工夫してあげましょう。

猫がストレスを感じているサイン

言葉をかわせない猫が、今この瞬間にストレスを感じているかどうかを飼い主さんが判断することは簡単ではないかもしれません。でも以下のような行動や状態が続けて見られるようであれば、猫がストレスを感じている可能性が高いといえます。

●頻繁に毛づくろいをする
●足やしっぽを何度も噛む
●食欲がない(異常に食べるようになることも)
●警戒しているような姿勢をとる
●暗い、狭いところに隠れて出てこない 
●何度もトイレに入ったり(頻尿)、尿に血が混ざる(血尿)

以下、猫がストレスを感じやすい代表的なケースと、それぞれの対策を解説します。

ストレス1:猫本来の欲求が満たせない

完全室内飼いが普及して、交通事故や感染症などのリスクが軽減されたことで、猫たちも安心して暮らしやすくなりました。しかし猫には狩猟動物としての本能が備わっていますので、本来の狩りの欲求が満たされないとストレスを溜めやすくなります。飼い主さんが遊んで発散させてあげることも大切ですが、留守中も楽しく過ごせるように、以下のような場所を備えましょう。

●室内の様子を見渡したり、運動ができる高い場所
●外の様子を眺められる場所

ストレス2:安心できない室内環境

猫はもともと単独で暮らしていた動物。「命にかかわる脅威を避けたい」「安全を確保したい」という欲求が備わっているので、安心できない環境はストレスとなります。来客時や怖い思いをしたときに隠れられる居場所を用意してあげましょう。

特に引越しや大規模なリフォーム等で、目新しく、自分のニオイも消えてしまった不慣れな環境に置かれると、強いストレスにさらされやすくなります。猫が「ニオイ」から安心できるようにしてあげてください。

●爪とぎやお気に入りの毛布、トイレ容器など、それまで使っていたものを捨てずに使う
●トイレ砂も、使用済みのものを、新しい砂に少し混ぜる
●フェロモン製剤(猫の頬から分泌されるフェロモンを含むスプレー)を活用する など

ストレス3:トイレが好みに合わない

きれい好きな猫にとって、「トイレが汚れている」「安心して使えない」「使いにくい」といったマイナスポイントはストレスに直結します。人が掃除をしやすいかよりも、猫にとって快適かどうかを優先して、トイレ環境を整えてあげましょう。

●トイレの数は、頭数+1個以上が理想。難しい場合は仲良しグループの数+1個
●トイレ砂の種類は、猫の好みに合わせる(鉱物系が猫に人気)
●トイレ容器は、広いほうがよい。体長の1.5倍の長さが理想
●高齢猫はまたぎやすい高さの容器に。あるいは手前に踏み台を作る など

ストレス4:同居猫との関係性がうまくいかない

猫は犬と比べても、複数を一緒に飼う家庭が多い傾向にあります。猫たちの相性がよければスペースの問題はあまりありませんが、不仲な猫同士や猫グループ同士が狭い空間を共有しなければならない場合、ストレスになりやすいでしょう。猫の関係性に配慮して、迎える頭数や空間づくりを考えましょう。

●理想は、1部屋に1頭以下(例:3LDKなら5頭まで)
●それぞれの猫専用の食事の器や休息場所を確保する
●仲が悪い猫同士が出くわしたときに、逃げやすい動線を確保する など

ストレス状態が続くと、病気になることも。
人でもストレスから体調を崩すことがあるように、猫も継続的なストレスによって、病気のような症状が出ることがあります。代表的なものは…

●心因性の脱毛
●皮膚炎などの皮膚の症状
●特発性膀胱炎 

です。そのほか、消化器系、呼吸器系、神経系の症状が引き起こされる可能性もあります。このような病気が疑われる様子が見られたら検査や処置が必要になりますので、動物病院に相談しましょう。

(記事監修:服部幸先生/東京猫医療センター院長)