猫の下痢、原因はストレス?誤飲?様子をきちんとチェックして病院へいこう![獣医師アドバイス]

猫の便は本来、かりん糖のようなコロンとした便が一般的です。それだけに「軟便」や「下痢」になると、様子を見ていて大丈夫なのか、動物病院に連れていくべきなのか、判断に迷うことも多いかもしれません。多くは1〜2日で回復する軽いものですが、なかには命に関わるような病気が隠れていることもあります。下痢の原因や対処法について知っておきましょう。

そもそも下痢とは・・・

腸は水分の分泌と吸収をくり返して、便の硬さを調整しています。それが、腸の中に水分の分泌を増やすような刺激物が入ったり、腸の運動が過剰になりすぎて消化物の水分を十分に吸収できないまま排出されたりすると、水分量のバランスが崩れて、下痢や軟便になってしまうのです。

あまり心配のない一過性の下痢

日常的によくある下痢は、フードの変更など食事が原因のもの。犬のように食いだめの習性がないので、食べ過ぎは少ないようですが、肉食動物なので食事に混ぜた野菜で消化不良を起こしたり、ラクターゼの分泌が少ないため牛乳や乳製品で下痢になることもあります。
また神経質な動物なので、引っ越し、騒音、来客、部屋の模様替えなど、飼育環境の変化によるストレスも原因になります。たいていは一過性で、それほど心配はいりませんが、なかにはストレスの原因を突き止めて取り除かない限り、下痢が続くこともあります。身のまわりに思い当たるふしがないか、まずチェックしてみてください。

絶食で1日様子を見てみよう

下痢の症状が軽く、元気もあるようなら、家で様子を見てもかまいません。その日1日、胃腸を休ませるために絶食をさせます。ただし、脱水を起こさないよう水は与えてください。翌日以降も下痢が治まらないようなら、病院で原因をはっきりさせたほうが安心です。とくに下痢以外に、吐いたり発熱などの症状がある場合は、すぐに病院へ行きましょう。

こんな危険な病気が潜んでいる可能性も

様子見をしていてはいけない下痢には、次のようなものがあります。

●毒性物質の誤飲・誤食
飼い主さんの薬や有毒植物、中毒性物質などを口にしてしまった場合。猫はセルフグルーミングをするので、被毛に付着した有毒物質をなめてしまうこともあります。

●細菌・ウイルス・寄生虫感染
ワクチン接種を受けていない猫、子猫のときの接種が不完全だった猫では、ウイルス感染も疑われ、激しい嘔吐や発熱を伴うことも多いです。腸内寄生虫の感染は子猫や高齢猫で重症化しやすく、貧血や体重減少を起こすことも。

●膵臓・肝臓の疾患、腫瘍、炎症性腸疾患(IBD)など
その他、下痢や嘔吐が続く危険な病気として、膵炎や肝炎、消化器系の腫瘍、炎症性腸疾患(IBD)などがあります。

下痢には2種類ある

腸には、体に必要な栄養分を吸収する小腸と、必要な水分を吸収する大腸がありますが、そのどちらに異常があるかによって、排便の回数や便の状態、用いる薬も異なってきます。
「小腸性の下痢」では、1回の便の量は多くなりますが、回数は変わりません。やや軟便のこともあれば水っぽいこともあり、出血がある場合は黒っぽいタール便になります。
一方、「大腸性下痢」は、1回の便の量は普段と同じか少なめですが、回数が頻繁になり、人で言うところの「トイレから出られない状態」になります。軟便でゼリーに包まれたような粘液便になることも多く、出血がある場合は鮮血便になります。大腸性の下痢では、とくに重い病気ではなくても、下痢が続くと腸の粘膜が傷ついて血便になることがあります。

診断には飼い主さんの情報が必須

正確な診断のためには、飼い主さんの説明がとても重要です。病院に連れていく前に、下痢の背景や愛猫の健康状態について情報を整理しておきましょう。

●下痢はいつからか
●便の回数や状態はどうか
●元気や食欲はあるか
●嘔吐や発熱など下痢以外の症状はあるか
●食事や環境の変化、誤飲の可能性など、原因に思い当たるふしはないか・・・など。

また、いつも軟便気味なのか、めったに下痢をしないのかなど、普段の状態を把握しておくことも大切です。飼い主さんからの的確な情報が、正確な診断への早道となります。

(監修:石田卓夫先生)