目の赤みは炎症のサイン。にごりや眼球の色の変化も見逃さないでしっかりチェック![獣医師アドバイス]
人と同様、犬の目の赤みは炎症や充血が起こっていると考えられます。けれども、どの部分が赤いかで異常の原因は異なります。また、高齢犬では白内障も増えてきます。視力低下は気づきにくく、飼い主の知らないうちに視力を失っていることもあるので、普段からアイコンタクトを取って絆を深めつつ、目の色や状態のチェックも行いましょう。
目の赤みはまず結膜炎を疑う
目の赤みの原因で一番多いのが結膜炎です。上下のまぶたと眼球をつないでいる結膜は、つねに外気にさらされ、チリやほこり、植物の種子、まつげ、細菌やウイルス、化学物質などさまざまな刺激を受けて炎症が起こることがあります。一般的に、片方の目だけが赤い場合は、異物が目に入ったなどの物理的な刺激が原因で、両目が赤い場合には、細菌やウイルスなどの感染、アレルギーなどが原因だと考えられます。
白目も含む結膜が炎症によって充血すると、いわゆる赤目の状態になります。目の病気以外でも、心臓病にかかると血液の循環が悪くなってうっ血し、結膜が充血することもあります。
また、目頭の内側にあって普段は見えていない瞬膜が飛び出して炎症が起こり、さくらんぼ状に赤くふくらむ「チェリーアイ」(瞬膜露出症)は、ビーグルやアメリカン・コッカースパニエルに遺伝的に多くみられることが知られています。
目の色の変化は特に要注意
そのほか、眼球(虹彩)の色や瞳孔の大きさもしっかり観察しましょう。多くは目の病気ですが、肝臓の病気や高血圧が原因の場合もあります。
●眼球が白くにごる
全体的に白くにごっているときには「角膜炎」など角膜に炎症が起こっているおそれがあり、光をまぶしがるしぐさがみられ、涙もたくさん出ます。水晶体の部分だけが白くにごっている場合は「白内障」が考えられます。
●眼球が赤く見える
虹彩に充血や出血、にごりなどがみられたら、ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)に炎症が起こる病気「ぶどう膜炎」のおそれがあります。強い炎症が起こると、瞳孔が変形します。
角膜と虹彩の間にある前眼房で出血が起こる「前房出血」では黒目の部分が真っ赤になります。
●眼球が緑色に見える
全体的に目の色が緑色や黄色っぽくなり、明るい場所でも瞳孔が開いているときには「緑内障」が疑われます。ただし犬種によっては赤色になることも。進行すると眼圧が高くなって目が大きく飛び出してきます。失明することもあります。
●白目が黄色くにごっている
白目などの結膜が黄色くにごっているときには、「肝機能障害」によって「黄疸」が出ているサインです。歯肉なども黄色っぽくなります。
目の病気にかかりやすい犬種は日頃からケアを
パグやフレンチブルドッグ、シーズー、ペキニーズ、狆などの短頭種では、鼻が短くて目が大きい分、他の犬種に比べて角膜などに刺激を受けやすく、目の病気にかかりやすい傾向にあります。これらの犬種では、普段から目の状態を気にかけ、しっかりとチェックする習慣をつけましょう。
目の異常に気づいたらできるだけ早く病院に相談を
目に違和感があると感じたら、犬を座らせて正面から目の状態を観察します。明るい方がよく見えますが、直射日光が犬の目に当たらないように気をつけてください。片手で頭を軽くおさえ、もう片方の手の親指と人差し指でまぶたを広げて以下のポイントを観察します。必ず両目をチェックしましょう。
●目やにや涙は出ていないか?
●まぶしがったり、目をショボショボさせてはいないか?
●前足で目をこすっていないか?
●かゆがったり痛がったりしていないか?
●眼球に傷はないか?
●正面から見たときに左右でバランスが違っていない?
●目の動きは正常か?
●目以外の他の症状はみられないか?
目の異変のサインを見逃して病気が進行すれば、飼い主が気づかぬうちに視力を失っているという事態も招きかねません。犬は人の言葉で不調を訴えることをできませんが、「目は口ほどにものを言う」とはまさにその通り! 日頃からしっかり観察し、「いつもと違う」と感じたら、ただちに動物病院を受診しましょう。
(監修:石田卓夫先生)