おしっこが出ないのは重大なトラブルを示す赤信号! すぐに動物病院へ相談を[獣医師アドバイス]
猫は泌尿器系の病気にかかりやすい動物。特におしっこが出なくなったときは、病気の重大なサインです。おしっこがまったく出ない状態が2日続けば、死に至ることもありますので、丸1日出ない場合はすみやかに動物病院を受診してください。
おしっこが出ないとどうなる?
おしっこは、血液が腎臓でろ過されるときにできる液体状の排泄物で、体にとって不要となった老廃物や毒素と共に尿道を通って体の外に排泄されます。おしっこが出なくなると、本来ならば排出される窒素化合物などの有害な物質が体の中にたまって、最終的には「尿毒症」を引き起こします。嘔吐、下痢、食欲不振、けいれん、昏睡などの症状が現れ、2日以上おしっこが出なければ、死に至ることもあります。
こんなしぐさは要注意!
何度もトイレに行くのに少ししかおしっこをしていない、トイレを出たり入ったりする、トイレでおしっこをしようとして力む、おしっこをするときに苦しそうに鳴く、性器をしきりに舐めるなどのしぐさが見られたら、おしっこが出にくくなっているサインです。このようなしぐさが見られたら、すぐに動物病院に連れていきましょう。
おしっこが出なくなる病気
猫のおしっこが出なくなると、腎臓の機能が低下して腎不全を起こします。おしっこが出なくなる原因は、「おしっこが出せない/出にくい」「そもそもおしっこがつくれない」の2つに大きく分けられます。
●おしっこが出せない/出にくい
腎臓でおしっこは作られているものの、膀胱や尿道などにトラブルがあっておしっこがうまく出せない状態です。腎臓が血液をろ過した後の問題なので、「腎後性」と呼ばれます。
原因の筆頭にあげられるのが猫の下部尿路疾患(F.L.U.T.D)です。これは、膀胱や尿道などの下部尿路の病気の総称で、代表的なものが「尿路結石症(尿石症)」です。腎臓、尿管、膀胱、尿道などにできた結石や、その結晶と粘液、炎症産物などが尿道に詰まることで尿道閉塞が起こり、おしっこが出なくなります。おしっこのpHバランスが崩れたり、マグネシウムやリン、カルシウムなどのミネラル成分が増えたりすることで、結石ができやすくなります。猫では、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石が多く見られます。
メスに比べてオスのほうが尿道が細くカーブしている部分があるために結石が詰まりやすく、重症化しやすい傾向にあります。
●そもそもおしっこがつくれない
おしっこがつくれなくなる原因には、腎臓の機能に問題がある場合(腎性)と、腎臓にうまく血液が回らない場合(腎前性)があります。
腎性では、なんらかの中毒、細菌性の腎炎などによって急に腎臓が十分に働かなくなる急性腎不全が起こり、おしっこがつくれなくなります。また、慢性腎臓病の末期では、腎臓の組織の95%以上が壊れてしまうと尿が全く作れない腎不全の状態になります。
また、腎前性とは、腎臓よりも前に問題があり、腎臓は機能しているけれども、血液がうまく循環していないためにおしっこがつくれない状態です。血液循環が悪くなる心臓病や、急激な脱水や大量出血などによって起こります。
いずれの場合も、尿毒症になる前に早急に治療する必要があります。
おしっこが少しずつしか出ない膀胱炎
細菌の感染によって膀胱に炎症が起こる膀胱炎の場合は、腎臓に問題はありませんし、尿道が詰まるわけではありませんが、痛みがあるためにおしっこが少量しか出なくなります。膀胱におしっこがたまっていて残尿感があるので、頻繁にトイレに行くようになります。血尿や尿のにごりも見られます。結石や結晶が膀胱を傷つけることで炎症が起こることもありますので、尿石症と併発しやすい病気です。
日頃からおしっこの様子をチェックしよう
おしっこの回数には個体差がありますが、通常は1日1〜3回くらいと言われています。日頃から、猫のおしっこの回数や量、色、している時の様子などをきちんと観察しておくことが大切です。普段の正常な時の状態を把握できていてこそ、いち早く異常に気づくことができるのです。
(監修:石田卓夫先生)