生理現象?それとも病気?吐く様子を観察して病院でしっかり原因究明を![獣医師アドバイス]

は人と比べてよく吐く動物です。胃酸過多で胸やけを起こしたときには、散歩の途中で草を食べて胃を刺激して胃酸を吐き出すことがありますし、食べすぎたときや味の濃いものを食べたときにも吐き出すことがあり、これらはいわば生理現象です。けれども、「よく吐く動物」という思い込みが病気の発見を遅らせることもあるので、しっかり観察しましょう。

そもそも「吐く」とは

吐く行動は吐き方や吐く内容によって、次の3つに分けられます。

●吐出
飲み込んだ食物が胃に到達する前に逆流して吐き戻すこと。吐物は食道を通過した筒状の状態をしていることもあります。前兆はなく、突然すっと吐き出します。

●嘔吐
胃の中にある消化途中の内容物を吐き出すこと。吐く前にはお腹を大きく上下させるしぐさがみられます。

●嚥下障害
口の中に入れたものを飲み込むことができずに、すぐに吐き出すこと。吐く前兆はなく、すんなりと吐き出します。

吐くときはここをチェック

「吐く」ことは、消化器の病気だけでなく全身の病気、神経の病気、精神的な問題などさまざまな異常によっても現れます。原因を突き止めて獣医師が正しく判断するためには、正確な情報を伝える必要があります。次のポイントをチェックしてください。

●いつ吐くか
食後すぐに吐くのか、時間が経ってから吐くのか、定期的に吐くのか、吐く時間帯はいつかなどを確認します。

●吐いた回数
吐いたのは1回だけか、1日に複数回か、くり返し激しく吐くのか、週に何回くらいかなどをチェックします。

●なにを吐くか
吐くのは食物や水か、消化された状態か、胃液などが含まれているか、寄生虫などが混ざっていないかなどを確認します。液体を吐いたときには、黄色っぽいかどうかを確認します。黄色い場合は胆汁が逆流して胃酸過多になっている可能性があります。

●どんなふうに吐くか
するっと吐くのか、お腹を上下させて吐くのか、食べてすぐに吐き出すのかなど、吐くときの様子も重要な情報です。吐きそうなしぐさで吐けない場合には、異物誤飲で異物がひっかかっている可能性があります。

●吐いたものに血は混ざっていないか
血が混ざっている場合には、消化器からの出血や毒物の誤飲、感染症などが考えられるので、緊急の処置が必要になります。

●よだれがたくさん出ていないか
吐き気とともによだれがたくさん出る場合は、化学薬品などによる中毒などが疑われ、急を要します。

●ウンチのようなニオイはしないか
腸閉塞を起こして、腸の内容物が逆流している疑いがあります。

●ほかの症状はみられないか
下痢はしていないか、おしっこはちゃんと出ているか、熱はないか、元気や食欲はあるかなど、ほかの症状を確認します。激しい下痢と嘔吐をくり返すときにはパルボウイルス感染症などの疑いもあります。

吐いた後の様子も確認しよう

吐いているときだけでなく、吐いた後の様子の観察も重要です。吐いた後に元気がなかったり、ぐったりしていないか、注意深く観察してください。吐いた後でも食欲や元気があってけろりとしている場合は一過性のものであり、病気の危険性は低いと考えられます。ただし、元気そうでも週に2回以上吐く場合は、動物病院に相談しましょう。

病院に連れていくタイミングは?

犬が吐く原因はさまざまでいろいろな病気が考えられます。吐いた後で元気や食欲がある場合には、少し様子をみても心配ありませんが、「週に2回以上吐く」「吐物に血が混ざる」「吐物が黄色っぽい」「元気と食欲がない」「体重が減る」ときには動物病院を受診しましょう。
「1日に何度もくり返し激しく吐く」「吐こうとしているのに吐けずにぐったりしている」「熱がある」「下痢やけいれんなど他の症状がみられる」ときには至急動物病院に連れていってください。
吐くという症状はさまざまな病気で現れるので、しっかりと原因を究明する必要があります。吐く症状が長引けば、脱水症状を起こして体が衰弱していきますので、適切な治療を受けることが大切です。動物病院を受診する際は、吐いたものを持っていったり、スマートフォンやケータイで写真に記録しておくと診断に役立つこともあります。

(監修:石田卓夫先生)