食欲がない。成猫が1日以上何も食べないときには動物病院へ連れていこう[獣医師アドバイス]

「食欲は健康のバロメーター」と言われるように、食欲不振は多くの病気で見られる症状です。毎日の食事管理をしっかり行い、食欲を観察することが大切です。

食欲不振の目安

食事を食べる量が減ったり食べなくなったりする状態を「食欲不振」、まったく食べなくなった状態は「食欲廃絶」といいます。猫はもともと食欲にムラがあるので、1食分食べない程度であれば、さほど心配はいりませんが、1〜2カ月齢の幼猫で8時間以上、1歳未満の猫で半日以上、1歳以上の成猫で丸1日以上何も食べないとき は、なんらかの体調の異常が疑われます。

病気でなくても食べなくなることも

猫はデリケートな動物なので、さまざまな原因で食欲がなくなることあります。昨日まで食べていたものに突然飽きてしまうこともあれば、フードの種類を替えたことが気に入らなくて食べないこともあります。食べないと飼い主さんが心配して別の食べ物を出してくれることを学習して待っていることもあります。
また、引越し や、新しい動物や家族が増えたり、慣れない来客があったりしたことがストレスになり、食べなくなることもあります。

「食べたくない」のか「食べられないのか」

猫が食事を食べないときには、食事を出したときの反応を観察しましょう。食欲そのものがなくて「食べたくない」だけでなく、食欲はあるのに「食べられない」場合もあります。

●食欲がなくて食べたくない
食事を用意してもまったく興味を示さないときや、食器の近くに来ても食べる気配がなければ、食欲そのものがないサインです。元気がない、熱がある、下痢や嘔吐が見られる、ウンチやおしっこに問題はないか、体を触って痛がるところはないかなど、他に症状があるかどうかを確認しましょう。猫の慢性膵炎では、よく食欲がなくなりますが、外からみても何の症状もありません。病院での検査で初めてわかります。また、飼い主が気づかぬうちに異物を誤飲して、それが胃の中にとどまることで食欲不振になることも多いので注意が必要です。

●食欲があるのに食べられない
食器の所まで来るのに口をつけない場合には、食欲があるのに食べられない状態になっている可能性があります。たとえば、口内炎や舌の潰瘍などで口の中に痛みがあって食べられない、歯の間に異物が挟まっているなど、口の中の違和感で食べないこともあります。口の中に痛みがあるときにはよだれが出ます。鼻が詰まっていてニオイがしないために食べられなくなることもあります。口の中に入れた後に飲み込めずに吐き出してしまう場合には、口の筋肉や食道の神経などに何らかの障害が起こっている可能性もあります。口の中に異常がないか確認しましょう。

病院に連れて行くタイミングは

猫は日頃から食欲にムラがあるだけに、少し様子を見ていればまた食べはじめるだろうと思うかもしれません。けれども、食欲不振はいろいろな病気のサインでもあります。「ほかの症状も見られ、食欲がないとき」には、速やかに動物病院に行きましょう。「他の症状はないものの、何も食べず、水も飲まない状態が1日半続いたとき」「他の症状はなく、少しずつ食べているけれど3日経っても元の食欲に戻らないとき」にも動物病院を受診してください。特に、肥満の猫では、1日半まったく食事をとらないと肝臓に脂肪がたまる「脂肪肝」という病気を引き起こし、黄疸が出たり衰弱したりするので油断は禁物です。体力のない子猫や高齢猫も早めに動物病院で相談してください。

1日分の食事量はしっかり管理しよう

食事は健康の「バロメーター」=指標となるものですから、1日の食事をいつも一定量与えるようにしましょう。毎日与える量にばらつきがあれば、ちゃんとした「指標」になりませんし、食べ残しや食べない原因が前の食事で食べ過ぎてまだお腹が空いていないということもあるからです。食欲の変化にいち早く気づくためには、日頃からきちんと食事管理をし、食べるときの様子もしっかり観察するように気を配りましょう。

(監修:石田卓夫先生)