体のかゆみは犬にとってストレスに。原因を突き止め、適切な処置を行うことが重要![獣医師アドバイス]

犬はかゆいところがあると、後ろ足でカリカリと体を掻きます。口を使って舐めたり噛んだりすることもあります。しきりに体を掻くときは、まずは皮膚のトラブルを思い浮かべるかもしれませんが、内臓の病気やストレスがかゆみの原因になっていることもあります。

かゆがっているときはまずは皮膚をチェック

「かゆみ」とは、掻かずにはいられない不快な感覚です。掻いてもかゆみがなかなか治まらずに、さらに激しく掻くことで、皮膚が傷ついて出血したり炎症を起こしたりして、症状を悪化させることがあります。代表的なかゆみの原因は、ノミやダニ、カイセン、ニキビダニ(毛包虫)など外部寄生虫によるもの、細菌感染や皮膚糸状菌症などカビによるものなどです。体を掻いているときは、まずはその部分の毛をかき分けて、皮膚の状態を確認します。

アレルギーや内臓の病気やストレスも

寄生虫や感染症以外では、なんらかのアレルギーが疑われます。原因となるアレルゲンが皮膚から吸収されて全身のかゆみを起こす犬アトピー性皮膚炎、アレルゲンに触れることで48時間くらいで、その場所に病変ができる接触性アレルギー、アレルゲンとなる食べ物を摂取して起こる食物アレルギーなどがあります。ノミアレルギー性皮膚炎も、ノミが犬の血を吸うときに出す唾液によって皮膚の広範囲に起こるアレルギーです。
そのほか、腎臓病、肝臓病、糖尿病、栄養障害、腫瘍、内分泌系の病気、自己免疫疾患や、心因的ストレス、老齢による乾燥など、さまざまな要因が考えられます。

かゆがっている場所をチェック

かゆがっている部分がどこかをしっかり確認して伝えることは、獣医師が病気を診断する際の大きなヒントになります。

●耳をしきりに掻
耳の中に寄生するミミヒゼンダニによる耳疥癬症が疑われます。耳の奥がかゆいために耳の後ろをしきりに激しく掻き、脱毛や皮膚の異常がみられます。長毛種で耳のつけ根あたりに毛玉がよくできるのは耳をしきりに掻いているサインでもあります。また、アトピーや食事などのアレルギー性皮膚炎では、よく外耳炎が起こり、かゆがります。

●鼻先や口の周りを掻く
地面などのニオイを嗅ぐときに、土を経由して細菌やカビ、寄生虫などに感染することがあります。細菌感染による膿皮症、真菌による皮膚糸状菌症、ノミやダニなどの寄生などが考えられます。目や口のまわりなどの毛が抜けて、赤くただれてきたら、ニキビダニによる毛包虫症(ニキビダニ症)の可能性もあります。食事性アレルギーも顔の周りに発疹などの症状が現れ、かゆがります。

●背中を掻く
ノミアレルギー性皮膚炎では激しいかゆみを伴い、背中から尾のつけ根にかけてと腹部や後肢が脱毛します。ニキビダニによる毛包虫症が進行すると全身に症状が現れます。

●おなかを掻く
副腎皮質ホルモンが過剰に分泌される副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)では皮膚が薄くなり、かゆがることがあります。左右対称の脱毛もみられます。

●足先
足は地面に接しているため、膿皮症などの細菌感染が起こりやすくなります。またアトピーや食事によるアレルギー性皮膚炎でも足先をよく舐めて、かゆみに対処しようとします。肉球の間にものが挟まっている場合も気にして足先をかじったり舐めたりします。

かゆみの原因を探るポイント

かゆみの原因の特定には、タイミングや他の症状などを総合的に判断することが重要です。動物病院で診断するときの手がかりにもなるので、次のポイントをしっかり観察しましょう。

●かゆみ以外の症状
皮膚に赤みや湿疹、脱毛やフケなどがないかを確認します。

●かゆみの度合い
たまに掻く程度か、かゆみが非常に強く皮膚を掻き壊すくらいかなどを観察します。

●かゆがる時期
かゆがる時期や季節が決まっている場合には、外部寄生虫の感染やアトピー性皮膚炎などの可能性もあります。

咬んだり舐めたりするときはかゆみ以外の原因も

かゆいときに、後ろ足で掻くだけでなく、しきりにその部分を舐めたり噛んだりすることがあります。ただし、かゆみ以外でも皮膚に気になる刺激があって行うこともありますし、傷口を舐めることで治そうとしている場合もあります。肛門の周りを舐め続けるときには、直腸などの異常も考えられます。
舐めたり噛んだりするときには、掻いているときと同様に、まずは皮膚に異常がないかを確認します。皮膚に異常がない場合は、ストレスや神経系の病気も疑われます。

かゆみは長引かせないことが重要

このようにかゆみにはさまざまな原因があります。次の症状が1つでも当てはまったら、動物病院に連れていきましょう。

●激しく掻いている
●掻きむしって傷になり、出血している
●皮膚に明らかな異常がある
●他の同居動物や家族にもかゆみがある
●ノミがいる
●最近食事内容を変えた
●薬物中毒の可能性がある、家で薬を飲ませた
●何か薬物が皮膚についた可能性がある
●いつも特定の季節にかゆくなる

いずれにしても、体を激しく掻いたり、噛んだりするほどに皮膚が傷ついて症状が悪化し、かゆみが長引くことは犬にとっても大きなストレスになります。できるだけ早く病院で原因を特定してもらうことが大切です。

(監修:石田卓夫先生)