犬の下痢、原因はストレス?誤飲?様子をきちんとチェック して病院へいこう![獣医師アドバイス]

犬によく見られる体調不良の一つに、「下痢」があります。様子を見ていて大丈夫なのか、動物病院に連れていくべきなのか、判断に迷うことも多いかもしれません。多くは1〜2日で回復する軽いものですが、なかには命に関わるような病気が隠れていることも。下痢の原因や対処法について知っておきましょう。

そもそも下痢とは・・・

腸は水分の分泌と吸収をくり返して、便の硬さを調整しています。それが、腸の中に水分の分泌を増やすような刺激物が入ったり、腸の運動が過剰になりすぎて消化物の水分を十分に吸収できないまま排出されたりすると、水分量のバランスが崩れて、下痢や軟便になってしまうのです。

あまり心配のない一過性の下痢

日常的によくある下痢は、食べ過ぎやフードの変更など、食事が原因のもの。また、犬がたくさん集まるイベントに出かけたり、ペットホテルに預けたり、いつもと違う経験をすることも、疲れやストレスから下痢を起こしやすくなります。こうした下痢はたいてい一過性で、それほど心配はいりません。身のまわりに思い当たるふしがないか、まずチェックしてみてください。

絶食で1日様子を見てみよう

下痢の症状が軽く、元気もあるようなら、家で様子を見てもかまいません。その日1日、胃腸を休ませるために絶食をさせます。ただし、脱水を起こさないよう水は与えてください。翌日以降も下痢が治まらないようなら、病院で原因をはっきりさせたほうが安心です。とくに下痢以外に、吐いたり発熱などの症状がある場合は、すぐに病院へ。

こんな危険な病気が潜んでいる可能性も

様子見をしていてはいけない下痢には、次のようなものがあります。
●毒性物質の誤飲・誤食
飼い主さんの薬や有毒植物、中毒性物質などを口にしてしまった場合。
●細菌・ウイルス・寄生虫感染
ウイルス感染の場合は、激しい嘔吐や発熱を伴うことも多いです。初年度(1歳まで)のワクチン接種が完全に行われていない場合には疑われます。腸内寄生虫の感染は子犬や高齢犬で重症化しやすく、貧血や体重減少を起こすことも。
●膵臓・肝臓の疾患、腫瘍、炎症性腸疾患(IBD)など
その他、下痢や嘔吐が続く危険な病気として、膵炎や肝炎、消化器系の腫瘍、炎症性腸疾患(IBD)などがあります。

下痢には2種類ある

腸には、体に必要な栄養分を吸収する小腸と、必要な水分を吸収する大腸がありますが、そのどちらに異常があるかによって、排便の回数や便の状態、用いる薬も異なってきます。
「小腸性の下痢」では、1回の便の量は多くなりますが、回数は変わりません。やや軟便のこともあれば水っぽいこともあり、出血がある場合は黒っぽいタール便になります。
一方、「大腸性下痢」は、1回の便の量は普段と同じか少なめですが、回数が頻繁になり、人で言うところの「トイレから出られない状態」に。軟便でゼリーに包まれたような粘液便になることも多く、出血がある場合は鮮血便になります。大腸性の下痢では、とくに重い病気ではなくても、下痢が続くと腸の粘膜が傷ついて血便になることがあります。

診断には飼い主さんの情報が必須

正確な診断のためには、飼い主さんの説明がとても重要です。病院に連れていく前に、下痢の背景や愛犬の健康状態について情報を整理しておきましょう。

●下痢はいつからか
●便の回数や状態はどうか
●元気や食欲はあるか
●嘔吐や発熱など下痢以外の症状はあるか
●食事や環境の変化、誤飲の可能性など、原因に思い当たるふしはないか・・・など。
また、いつも軟便気味なのか、めったに下痢をしないのかなど、普段の状態を把握しておくことも大切です。飼い主さんからの的確な情報が、正確な診断への早道となります。

(監修:石田卓夫先生)