「あまり食べない」「食欲が落ちてきた」猫のための食欲アップ大作戦![獣医師アドバイス]

家の中だけで暮らしている猫は、運動が不足しがちで太りやすい傾向があります。しかし一方で、あまり食べずに痩せてしまうようなケースも。たとえば暑さが続くことで、人でいう「夏バテ」のような状態になり、食欲が落ちやすくなることもあります。ほかにもフードの好みや加齢が、食欲の減少に関わっている場合も。適正な体重をキープして、愛猫が健康でいられるように、食欲が落ちた場合の対策も知っておきましょう。

「食べない」に病気が関係していることも

まず、体重減少が続いたり、食べない状態が続く場合は、ほかの病気が関わっている可能性があります。目安として、3カ月以内に体重が5%以上減少するような場合は、受診を考えてください。また、まったく食べない状態が続くと、とくに太っている猫は肝リピドーシス(脂肪肝)が引き起こされて肝臓が機能しなくなるリスクがあります。1日半ほど絶食が続いたら必ず受診しましょう。

受診して食欲減少の原因が病気ではなさそうだ、とわかったら、愛猫の好みを見極めながら、食欲アップをはかりましょう。

食欲アップ方法1:フードを温めて香りを出す

一つ目の方法として、猫は冷えている食事を好まない傾向があるので、フードを軽く電子レンジで温めてみてもいいでしょう。とくに冷蔵庫で保管したウエットフードは冷えすぎていて猫が好みにくいですが、これも温めることで香りが出て、嗜好性がよくなります。ドライフードも軽くなら電子レンジで温めたり、熱すぎない程度のお湯をかけてもOK。お湯を足すことで、水分摂取を兼ねられます。

食欲アップ方法2:フードの種類を変えてみる

加齢とともに、猫の食の好みが変わることもあります。「うちの猫はドライフードしか食べない」と飼い主さんが思い込んでいても、じつはウエットフードのほうがよく食べるようになっているかもしれません。また、「お魚味が好き」と思っていても、肉味のフードをほとんど試したことがないだけ、という場合も。いったん先入観を取りのぞいて、ほかのタイプを試してみるといいででしょう。

食欲アップ方法3:トッピングを試してみる

ウエットフードを好むけれど基本の食事はドライフードという猫には、ふだん食べるドライフードに温めたウエットフードを少しのせたり、混ぜ込んで与えてみてもいいでしょう。

猫が好みやすいトッピングとして煮干しがよくあげられますが、カルシウムやリン、マグネシウムなどのミネラルを豊富に含み、尿石症の原因にもなりやすいので、与える場合は注意が必要です。細かくしてトッピングとして与える場合でも1日1本までが限度。一方で鰹節は、じつはカルシウム量はそれほど多くありません。しかし、与え過ぎることで栄養バランスが崩れるので、1日ひとつまみくらいまでが目安です。

これらを与えたい場合、これまで下部尿路疾患にかかったことがあったり、腎臓病などで食事制限がある猫は、獣医師との相談が必要です。たとえばそのまま与えなくても、煮干しを入れた出汁パックをフードの保存容器に入れると、香りだけをフードにうつすこともできるので、試してみてもいいでしょう。

食欲アップ方法4:別の形や深さの食器も置いてみる

口が狭くて深さがある食器では、ヒゲがふちに当たるのが不快なのか、猫が食べにくそうにすることがあります。広めの口で、猫が舌ですくい上げやすい「浅すぎず深すぎない」「適度にラウンドした」器がベスト。ただし、ペルシャやヒマラヤンなどの鼻ペチャの純血種では、深さがあるよりも、浅めの器のほうが食べやすいようです。舌の動かし方にも、猫それぞれクセがあるので、いくつか試してみてもいいでしょう。

器の素材は、プラスチック製は汚れが残りやすいので、ステンレスか陶器をおすすめします。食事が終わるたびに洗って、清潔さを保つことも大切です。

食欲アップ方法5:運動量を増やす

動かず寝てばかりいると、たいして食欲が沸かないのは人も猫も同じ。積極的に遊びの時間をとって、運動量を増やしましょう。

療法食へ切り替える場合は、少〜しずつ

猫が食べなくなるケースとして、基本的な食事から、疾病に対応した療法食への切り替えのタイミングもあります。とくに高齢猫がかかりやすい腎臓病の療法食への切り替えでつまずくことは多いようです。いきなり全てを療法食に替えるのではなく、最初はこれまでの食事と療法食を9:1の割合から始めるなど、徐々に慣れさせていきましょう。

(記事監修:服部幸先生/東京猫医療センター院長)