おしっこが出にくい状態が長く続くのは危険。すみやかに動物病院で受診を[獣医師アドバイス]

犬のおしっこが少ししか出ない、出にくい、あるいはまったく出なくなったときは、なんらかの病気の重大なサインです。おしっこが丸1日、出ない場合はすみやかに動物病院を受診してください。

おしっこが出ないとどうなるの?

おしっこは、血液が腎臓でろ過されるときにできる液状の排泄物で、体にとって不要となった老廃物や毒素が 尿道を通って体の外に排泄されます。おしっこが出なくなると、本来ならば排出される窒素化合物などの有害な物質が体の中にたまって、最終的には「尿毒症」を引き起こします。嘔吐、下痢、食欲不振、けいれん、昏睡などの症状が現れ、2日以上おしっこが出なければ、死に至ることもあります。

こんなしぐさは要注意!

おしっこの量は飲んだ水の量によっても変化します。水をあまり飲まなければ当然減りますし、気温が高いときには、舌を出してハァハァとあえぐことで唾液や呼気の中の水分を蒸発させて体温調整をするので、その分、おしっこの量も少なめになります。
ただし、おしっこの姿勢をしているのに少ししか出ない、ポタポタと垂らす、トイレを出たり入ったりする、トイレでおしっこをしようとして力む、おしっこをするときに苦しそうに鳴く、性器をしきりに舐めるなどのしぐさが見られたら、注意が必要です。すぐに動物病院に連れていきましょう。

おしっこが出なくなる原因は

おしっこが出なくなる原因は、「おしっこが出せない/出にくい」「そもそもおしっこがつくれない」の2つに大きく分けられます。

●おしっこが出せない
腎臓でおしっこはつくられているものの、膀胱や尿道、その周辺にトラブルがあっておしっこがうまく出せない状態です。腎臓が血液をろ過した後の問題なので、「腎後性」と呼ばれます。
代表的なものが「尿路結石(尿石症)」によるもので、腎臓、尿管、膀胱、尿道などにできた結石や、その結晶が尿道に詰まることで尿道閉塞が起こり、おしっこが出なくなります。メスに比べてオスは尿道が細くカーブしている部分があるために結晶が詰まりやすい傾向にあります。
また、細菌の感染によって膀胱に炎症が起こる膀胱炎でも、痛みがあるためにおしっこが少量しか出なくなります。膀胱におしっこがたまっていて残尿感があるので、頻繁にトイレに行くようになり、血尿や尿のにごりも見られます。尿道が短いメスで多く見られます。
そのほか、オスでは前立腺炎、前立腺肥大など、前立腺のトラブルによって尿道が圧迫されるとおしっこが出にくくなります。

●そもそもおしっこがつくれない
おしっこがつくれなくなる原因には、腎臓の機能に問題がある場合(腎性)と、腎臓にうまく血液が回らない場合(腎前性)があります。
腎性では、なんらかの中毒、細菌性の腎炎などによって急に腎臓が十分に働かなくなる急性腎不全が起こり、おしっこがつくれなくなります。慢性腎臓病の末期で腎臓の組織が全く壊れてしまうと(95%以上)、尿が全く作れない腎不全の状態になります。
また、 腎前性とは、腎臓よりも前に問題があり、腎臓は機能しているものの、血液がうまく循環していないためにおしっこがつくれない状態です。血液循環が悪くなる心臓病や、急激な脱水や大量出血などによって起こります。
いずれの場合も、尿毒症になる前に早急に治療する必要があります。

日頃からおしっこをしている様子をチェックしよう

おしっこの回数は個体差があり、年齢によっても異なります。子犬と老犬はやや回数が多くなりますが、散歩中のマーキングを除き、成犬では1日3〜5回くらいと考えられています。日頃から、愛犬のおしっこの回数や量、色、している時の様子などをきちんと観察しておくことが大切です。普段の正常なときの状態を把握できていてこそ、いち早く異常に気づくことができるのです。

(監修:石田卓夫先生)