猫の脱毛、抜けている部分や時期、かゆみなどをきちんとチェックしよう！［獣医師アドバイス］

全身を毛で覆われている猫は、新陳代謝によって毛が定期的に抜けて生え替わります。だから、多少毛が抜けるのは当たり前だと思いがちですが、大量に抜けたり、部分的にごっそり抜けたり、かゆみがある場合には要注意。生理的な脱毛か、病的な脱毛か、ポイントを覚えておきましょう。

大量に抜ける換毛期は年2回

猫の換毛期は、通常、春と秋の年2回です。冬から初夏にかけてと、秋から冬にかけてのこの時期に毛が生え替わるために、普段よりも特にたくさん毛が抜けます。これは言わば「衣替え」のようなもので、全身の毛がまんべんなく抜けることで寒さや暑さを調節します。
ただし、室内飼育では、エアコンや照明器具などによって環境が比較的一定に保たれ、季節による温度や日照時間の変化が感じにくくなっているため、１年中、抜け替わる傾向にあります。

内臓の病気やホルモン異常が原因のことも

本来、毛が生えているべき皮膚で、部分的あるいは全体的に薄くなったり、完全に抜け落ちたりしている状態を「脱毛」と言います。赤みやかゆみなど炎症を伴う脱毛と、炎症を伴わない脱毛がありますが、皮膚が透けるくらい毛が抜けているときは、なんらかの病気が疑われます。
「脱毛」と聞くと、皮膚病を思い浮かべるかもしれませんが、ホルモン異常や内臓の病気が原因で毛が抜けることもあります。また、猫が毛をなめ切って脱毛にみえることもあります。

脱毛部分と皮膚の状態をしっかり確認

毛の抜け方、抜ける時期、炎症やかゆみがあるかどうかなどを確認しましょう。どの部分が抜けているかが病気特定の手がかりになります。

●顔や耳のふちの脱毛
顔や耳のふちなどに脱毛とかさぶたが見られる場合は、ショウセンコウヒセンダニという小さなダニが寄生して起こる「疥癬（ヒゼンダニ症）」が疑われます。激しいかゆみも伴います。

●頭部や額の脱毛
特定の食べ物に対して過敏反応を示す「食物アレルギー」では、目の上や額、耳のつけ根の皮膚が赤くなってブツブツができたり、フケが増えたり、脱毛したりします。かゆみやぶつぶつが全身に広がることもあります。

●白猫の耳先や頭部の脱毛
白猫では日光の刺激で「日光性皮膚炎（日光過敏症）」を起こし、頭部や耳先の毛が抜けることがあります。ひどくなると耳先や鼻、口のまわりがただれたり潰瘍ができたりします。これが皮膚の癌につながることがわかっています。

●顔のまわりや足先の円形脱毛
「皮膚糸状菌症（白癬）」は皮膚糸状菌というカビ（真菌）によって起こる皮膚炎で、顔のまわり、足先の一部など赤く円形に腫れて脱毛するのが特徴です。人にうつることもあります。

●首から背中、尾のまわりの脱毛
ノミの寄生による「ノミアレルギー性皮膚炎」では、首や背中、尾のつけ根やお尻のまわりなどが脱毛します。小さな赤い発疹やかさぶたができ、激しいかゆみもあります。

●後ろ足の後ろ側が線状に脱毛
白血球の一種である好酸球の異常で起こる「線状肉芽腫」は、おもに後ろ足の後ろ側などが一直線状に盛り上がって脱毛します。フケも見られます。

左右対称の脱毛にも注意

後ろ足の内側からお腹にかけて左右対称に脱毛することがあります。進行すると腰や背中まで脱毛が広がることもありますが、毛を検査すると、たいていの場合はなめ切っていることがわかります。軽いかゆみなどが主な原因で、内分泌の問題ではなく、アレルギーのような炎症の場合がほとんどです。 また、猫ではあまり多くはありませんが、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることで発症する「クッシング症候群（副腎皮質機能亢進症）」では、お腹がふくらんで、血管が透けてみえるほど皮膚が薄くなり、毛づやが悪くなるなどの症状とともに、耳先やお腹の毛が左右対称に脱毛することがあります。さらに、老猫のお腹がてかてかに脱毛した場合には膵臓の癌が疑われます。

かゆみのある脱毛は比較的気づきやすいのですが、かゆみがないと見過ごしがちになることもあります。日頃のブラッシングで、抜け毛の量や皮膚の状態をしっかり観察しておきましょう。気になる症状がみられたら、動物病院を受診してください。

（監修：石田卓夫先生）