涙・目やに、目をこする……目のトラブルだけでない、感染症の疑いも![獣医師アドバイス]

人は悲しいときやうれしいときなどに涙を流すことがありますが、犬や猫は感情で涙を流すことがありません。犬がたくさん涙を流していたり、いつもより多く目やにが出ていたりしたら、それは何らかの病気のサインです。

そもそも「涙」や「目やに」はなぜ出るのか

犬の目も人と同じように常に涙で潤っています。涙には目の表面の乾燥を防いだり、ごみなどの異物を洗い流したりする働きがあります。涙の中には水分のほかに油分や粘液が含まれています。目やには専門用語では「眼脂(がんし)」といいますが、新陳代謝によって角膜や結膜からはがれ落ちた古い細胞や、目に入ったごみなどが涙の粘液成分と結びついてできる、いわば皮膚のあかのような生理的な分泌物です。普段はまばたきをすることで、涙と一緒に鼻涙管を通って鼻腔に抜けます。眠っている間はまばたきをしないため、朝起きたときに目やにが目立つことがあります。

目やにや涙のチェックポイント

一時的に涙・目やにが出る程度であれば心配はありませんが、それが新陳代謝としての正常な目やになのか、病気のサインなのかを見分けるためには、次のポイントを確認しましょう。

●目やにの色と量
目やには大きく次のタイプに分けられます。

(1)やや乾燥した目やに/黒や茶褐色の目やにが目頭などに少量ついている程度であれば、代謝活動によってつくられた正常な目やにです。クリーム色や灰色でも少量であれば心配ありません。ただし、目やにをつけっぱなしにしているとニオイの原因になるので、こまめに取りましょう。

(2)化膿性の目やに/黄色い膿のようなドロッとした目やには、炎症や細菌感染があるときにみられます。

(3)粘液性の目やに/白または灰色でネバネバとした目やには、角膜炎や結膜炎などで目に刺激があるときにみられます。

(4)涙状の目やに/透明でサラサラしている目やには、主な成分は涙で、アレルギーや外傷などの刺激、ウイルス感染などでみられます。ウイルス感染では、赤褐色の場合もあります。
いずれのタイプも急に増えたときには要注意。目がふさがるほど出るのは明らかに異常です。逆に、涙の量が少ないことで起こる乾性角結膜炎(ドライアイ)もあります。

●片目か両目か
目やにや涙が出ているのが片目だけの場合は、異物が目に入って傷がついた可能性があります。両目から出ている場合は、細菌やウイルス感染の疑いがあります。

●目の様子
目やにや涙だけでなく、目の色やにごり、左右の瞳孔の大きさ、まぶたの腫れ、目の動きなども確認してください。目のトラブルや体調が悪いとき、目頭のほうから瞬膜という白い膜が現れることがあり、体調のバロメーターにもなります。

犬種特有の目のトラブルもある

シーズー、ペキニーズ、チワワ、フレンチブルドッグ、パグなど鼻の低い短頭種では、目から鼻へと涙が抜ける鼻涙管が狭くなったり詰まったりしていることがあり、涙がいつも目からあふれる流涙症も多くみられます。慢性的に涙があふれることで茶色っぽい目やにが慢性的に出るようになります。目やにや涙をそのままにしておくと、固まって取りにくくなったり、涙やけが起こって毛が茶色に変色したりするので、濡らしたガーゼやコットンでこまめに拭き取りましょう。短頭種で涙や目やにが目立つ場合には動物病院に相談しましょう。
そのほか、先天的に眼の縁が内側に巻き込まれている眼瞼内反症、外側にめくれあがる眼瞼外反症など、いわゆる逆さまつげの状態になると、毛があたって眼球を刺激するため、涙や目やにがたくさん出ます。トイプードルやコッカースパニエル、ブルドッグやセントバーナードでよくみられます。

犬ジステンパーなどの感染症の疑いも

目やに・涙は目のトラブルだけでなく、感染症の症状として現れることもあります。犬ジステンパーにかかるとくしゃみや鼻水、咳、発熱など風邪に似た呼吸器症状がみられ、目やにも出ます。感染犬の目やにや鼻水からも感染します。ワクチンで防げる病気ですが、感染力が強く、致死率も高い病気です。ワクチン未接種の犬や、免疫力の少ない子犬や老犬では注意が必要です。

目をこするしぐさは目の違和感のサイン

目にごみが入ったり、痛みやかゆみを感じるなど目に強い違和感がある場合、犬は前足でしきりと目をこすります。こうしたしぐさがみられるときには、目にトラブルが起こっている可能性が大。涙や目やにが出ていないかを確認してください。爪などで眼球が傷つけば症状が悪化し、放っておけば視力障害などが起こるおそれもあります。すでに視力が低下しているときにも目をこするしぐさがみられることもあります。
前述の通り、目のトラブルが起きやすい犬種もいます。大量の目やにや涙が出ているとき、くしゃみや鼻水などほかの症状が出ている場合、目に違和感がある場合には、動物病院でしっかり治療を受けましょう。

(監修:石田卓夫先生)