知っておきたい!小型犬が気をつけたい病気とケア[獣医師アドバイス]

近年は小型犬ブームといわれ、トイ・プードル、チワワ、ミニチュア・ダックスは常に人気犬種のトップ3の座を独占しています。小さくて愛らしい容姿が小型犬の魅力ですが、体が小さいゆえにかかりやすい病気もあります。

骨・関節の病気やけがに注意

小型犬は骨がほそく、生まれつき関節に問題があることも多いので、骨や関節まわりのトラブルに注意する必要があります。

●膝蓋骨内方脱臼
後ろ足にある膝蓋骨(ひざのお皿)がなんらかの原因で正常な位置から外れて内側にずれている状態です。通常、膝蓋骨は靱帯で支えられ大腿骨にある溝におさまっていますが、トイ・プードルやチワワをはじめとする小型犬では、生まれつき溝が浅くて外れやすい状態になっていることが多く見受けられます。軽症の場合は外れても自然に元に戻るため、ときどき悪いほうの足を上げる程度ですが、重症になると上げっぱなしになり、手術が必要になることもあります。滑りやすい床は関節に負担をかけ症状を悪化させることもあるので、滑らないように改善しましょう。

●前肢骨折
小型犬は骨が細いので、前足の骨折も多くなります。ソファから勢いよく飛び降りて前足をついたときに骨折することもありますし、抱き上げたときに落としたなど落下による骨折もみられます。骨が十分に成長していない子犬は特に要注意。飼い主さんの不注意でけがをさせることのないようくれぐれも気をつけてください。

あごが小さい小型犬に多い、歯のトラブル

マズル(鼻先から口)とあごが小さい小型犬は歯の生えるスペースが狭いので、歯のトラブルも多くなります。

●乳歯遺残
通常は生後5〜7カ月くらいまでに乳歯から永久歯に生え替わりますが、乳歯が抜けずに残り、そのまま永久歯と一緒に生えていることがあります。特に上下の犬歯に起こることが多く、放っておくと咬み合わせが悪くなったり(不正咬合)、正しい位置に生えなかった永久歯が歯肉や唇に突き刺さったり、歯垢がつきやすくなって歯周病の原因にもなります。乳歯遺残は放置しないで動物病院で抜歯してもらいましょう。

●歯周病
歯垢の中で増殖した歯周病菌が原因で歯肉や歯根膜などに炎症を起こす歯周病は、3歳以上の犬の約8割がかかっているといわれています。歯肉の腫れや口臭がみられ、進行すると化膿して歯が抜けることもあります。歯周病を放置しておくと、血流を介して歯周病菌が全身に運ばれ、肝臓や腎臓、心臓などに悪影響を及ぼすこともあります。小型犬は乳歯遺残や不正咬合などによって歯垢や歯石がつきやすいため、歯周病にもなりやすいのです。

歯周病は歯垢をためないことが一番の予防になりますので、毎日の歯磨きを習慣にしましょう。すでに歯石がたまっている場合には、動物病院で歯石除去を受けましょう。

呼吸がおかしいときは要注意! 循環器・呼吸器の病気

循環器系の病気(心臓病)は、腫瘍に次いで犬の死因の第2位に挙げられ、特定の小型犬に発症しやすいことも報告されています。また、呼吸器の気管の異常である「気管虚脱」は特に小型犬に多くみられます。

●僧帽弁閉鎖不全症
心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁が変性を起こしてきちんと閉まらなくなり、血液の逆流が起こる病気です。逆流した血液が肺に負担をかけ、息切れやせきなどの症状がみられます。症状が進むと肺に水がたまる肺水腫となり、呼吸困難に陥ります。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルで特に多く、マルチーズ、ポメラニアン、シーズーなどがかかりやすいことがわかっています。10歳前後のシニア期になると症状が現れやすくなります。治療は薬を使って症状を改善させる内科療法が一般的ですが、一部では外科手術も行われます。心臓を元通りに直すことはできないので、運動を控えるなど心臓に負担をかけない生活を心がけましょう。

●気管虚脱
呼吸をするときに空気の通り道である気管がつぶれて変形してしまう病気です。気管は通常は丸い筒状ですが、つぶれることで乾いたせきが出やすくなり、ゼーゼーと苦しそうに呼吸をして、ガーガーというガチョウの鳴き声のような特徴的な音が出ます。遺伝や老化、肥満などが原因と考えられ、パグ、チワワ、トイ・プードル、ヨークシャー・テリアでは若くても発症することがあります。治療は薬でせきや呼吸困難などの症状をやわらげます。また、興奮した後や高温多湿の状態で症状が出やすくなるので、日常生活の環境を改善することも重要です。

病気の知識をもっておくことが大事

小型犬がかかりやすい病気はほかにもたくさんありますが、「かかりやすい」という知識を持って健康管理をすることが大切です。食事管理や日頃のケア、環境づくりなど、日常生活の過ごし方によって、病気の発症をおさえることができるものもあります。すべての病気において肥満は悪影響を及ぼしますので、体重管理もしっかり行いましょう。また、異常を早期発見するためにも、年に1回以上は動物病院で定期健診を受けることをおすすめします。

(監修:石田卓夫先生)