食べ過ぎや肥満でもないのに、猫のお腹がふくれていたらすぐに動物病院へ![獣医師アドバイス]

愛猫のお腹がふくれているとき、食べ過ぎなら一過性のふくらみです。肥満なら、お腹だけでなく体全体に肉がつくので、背骨や肋骨を触ってみればわかります。そのいずれでもなく、お腹だけがふくらんでいるときは病気のシグナルかもしれません。

「腹水」がたまってお腹がふくれる病気

お腹のふくらみを触ってタプタプした液体の感触があったり、触るとふくらみが移動するような場合は、腹水が溜まっている可能性があります。
腹水は、心臓が悪く肝臓内で血液がうっ滞したり、腹腔内の腫れもので血管が圧迫されたり腹部の臓器が炎症を起こして体液が滲み出たり、なんらかの病気で血中のアルブミン濃度が低下し、浸透圧が下がって血液中の水分が血管から漏れ出たりして、腹腔内にたまるもので、ひどくなると胸を圧迫して呼吸困難や食欲不振、あるいは尿が出にくくなるなどの障害を引き起こします。
腹水を起こす原因として、次のような病気があります。

●猫伝染性腹膜炎(ほとんどの猫が感染経験のある猫腸コロナウイルスが体内で突然変異して、引き起こす病気。炎症を起こした腹膜や胸膜から体液が滲み出て腹水や胸水がたまり、お腹がふくれます。他に発熱、下痢、嘔吐などの症状も見られ、発症したらほぼ助かりません)
●心臓病(猫に多いのは心筋症。咳や荒い呼吸などに注意)
●肝臓病(肝炎などからの肝硬変。嘔吐や下痢、食欲不振などに注意)
●悪性腫瘍(肝臓、胃、腸など腹腔内臓器のがん。食欲不振や体重減少などに注意)

また、腹水以外にもお腹がふくれる病気はいろいろあります。腹水以外の症状も、よく観察してください。

腸に食べ物・便・ガスなどが貯留する「腸閉塞」「巨大結腸症」

異物を飲み込んだり、腸に腫瘍ができたりして腸閉塞を起こすと、腸の中の消化途中の食べ物やガスが溜まって動かなくなり、お腹がふくれます。腹痛や嘔吐、息や吐いたものから便臭がするなどの症状が見られ、緊急処置を要します。吹き出すような黒い液体の嘔吐が特徴です。
また猫に多い巨大結腸症は慢性的な重度の便秘で、やはり溜まった便とガスでお腹がパンパンに張り、便秘が続くと便のニオイの口臭がします。

子宮に膿が溜まる「子宮蓄膿症」

子宮蓄膿症は、避妊手術をしていない高齢のメス猫がかかることのある病気で、命に関わることもあります。猫が外陰部を気にしてなめたり、多飲多尿、嘔吐などの症状があり、外陰部から膿が排出されない閉鎖型の場合は、子宮に膿が溜まってお腹がふくらんで見えます。

「寄生虫感染」でもお腹がふくれる

回虫などのお腹の虫に感染した場合も、慢性の腸炎を起こしてガスが溜まり、お腹がふくれることがあります。とくに子猫は重症化しやすく、下痢や嘔吐、発育不良なども見られます。

命に関わる病気も多いので、一刻も早く動物病院へ

お腹のふくらみがシグナルになっている病気には、命に関わるものも少なくありません。腹水が溜まるのは、病状がかなり進行している状態ですし、腸閉塞や子宮蓄膿症などは緊急性の高い病気です。
お腹のふくらみに不安や異常を感じたら、ためらわずに動物病院で受診しましょう。

(監修:石田卓夫先生)