猫の毛づやが悪いのは、老化やお手入れ不足だけではない。考えられる病気とは?[獣医師アドバイス]
猫は自分でせっせと毛づくろいをするきれい好きな動物です。そのため、健康な猫は毛づやもよく、サラサラした手触りの毛並みをしています。もし毛がパサついていたり、毛並みの向きが整っていないときなどは、体の不調や何かの病気にかかっている可能性もあります。他にも異常がないか、よく観察してください。
老化や食事の栄養バランスが悪い
毛づやが悪くなる原因の一つに、老化があります。とくに病気でなくても、高齢になると消化・吸収力が低下してきて食事から十分に栄養を摂取できず、被毛まで栄養が行き届かないことがあります。また年をとると、若いときほどこまめに毛づくろいをしなくなることも、被毛の状態を悪化させる一因に。
猫の毛づやを左右する大きな要因は栄養です。健康な被毛をつくるには、十分なタンパク質と必須脂肪酸(オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸)のバランスの良い摂取が不可欠。栄養が不足していたり、栄養バランスが偏っていたりすると、高齢でなくても毛づやが悪くなってしまいます。
消化器・腎臓・内分泌系の病気が原因かも
病気が原因の場合もあります。具体的にはどんなケースが考えられるのでしょうか。
●消化器の病気
慢性胃腸炎や巨大結腸症などの消化器系の病気で、食欲不振や嘔吐、下痢、便秘などが長期にわたって続くと、十分な栄養を摂取できずに毛づやの悪化を招きます。
●腎臓の病気
猫は腎臓の病気にかかりやすく、血液をろ過する働きをする糸球体に炎症が起きる糸球体腎炎や、高齢猫に多い慢性腎臓病などになると、多飲多尿、嘔吐、下痢などの症状が見られ、毛づやも悪くなります。脱水を起こすことで、しばしば毛割れも見られます。
●内分泌系の病気
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、高齢猫がよくかかります。興奮状態が続くため一見元気そうに見えますが、食欲旺盛にもかかわらずやせてくる、多飲多尿、嘔吐、下痢のほか、脱毛や毛づやの悪化などの症状が出てきます。
寄生虫感染による栄養不足でも
回虫や鉤虫など、いわゆるお腹の虫の寄生も原因になります。元気がなくなり、嘔吐や下痢、便秘、ひどくなれば貧血を起こすことも。食べたものの栄養分が吸収されず、栄養不足から毛づやも悪くなります。
病気の場合は、食事の見直しやケアだけでは改善しない
体の不調は見られないのに毛づやが良くない場合は、食事内容を見直したり、サプリメントなどで不足しがちな栄養成分を補うなどの対処を。また、飼い主さんが定期的にブラッシングをして皮膚の新陳代謝をよくすることも大切です。毛づくろいを怠りがちになる高齢猫は、よりこまめにケアしてあげましょう。
病気が原因の場合は、食事やケアだけでは毛づやは改善しません。元気がない、多飲多尿、嘔吐や下痢、便秘など、毛づやの悪化以外にも気になる症状が見られるときは、動物病院で診てもらい適切な治療を受けましょう。
(監修:石田卓夫先生)