おしっこは出ていれば大丈夫?量が多いのは病気のサイン。動物病院で相談しよう[獣医師アドバイス]

おしっこは出なくなったら大変、毎日出ていれば安心、と思われがち。けれども、おしっこが出ていても量が多いのは問題です。おしっこは腎臓で血液がろ過されてできますが、量が増えるときには腎臓以外のさまざまな病気とも関連しています。

正常なおしっこの量や回数は?

そもそも、犬の正常なおしっこの量とはどれくらいでしょうか? おしっこの量には個体差があり、食事の内容や運動量、日頃の活動量などによっても変わってきますが、1日のおしっこの量の目安は、体重1kgに対して25〜40mL以下と考えられています。つまり、体重5kgなら125〜200mL以下、10kgで250〜400mL以下、20kgで500〜800mL以下で、それよりも多い場合は、なんらかの病気の可能性があります。
また、おしっこの量が増えると、色がうすくなってニオイもあまりしなくなってきます。

おしっこの回数はどうかとういうと、おしっこの回数は個体差があり、年齢によっても異なります。子犬と老犬はやや回数が多くなりますが、散歩中のマーキング以外では成犬では1日3〜5回くらいと考えられています。

水を飲む量も確認しよう

おしっこの量が多いときには、合わせて水を飲む量も確認しましょう。水をたくさん飲めば、体内の水分量が過剰になりおしっこの量も多くなります。 また、水を飲みすぎるためにおしっこの量が多くなっているのではないかと判断して、水を控えてしまうと、体の水分が不足して脱水症状に陥ることもあります。いつでも、新鮮な水が自由に飲めるようにしてください。

おしっこの量が増える病気

ホルモンや腎臓に何らかの異常が起こると水を飲む量が増えて、おしっこの量も増えます。おしっこの量が増えるおもな病気には次のようなものがあります。

●糖尿病
血液中のブドウ糖の量が増えて腎臓が再吸収しきれなくなり、それに伴い大量の水分が尿として出るため、のどが渇いて水をたくさん飲むようになります。食欲はあるのにどんどんやせていきます。

●クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
体をシャキッとさせて食欲も上げるホルモンを分泌する副腎皮質の機能が過剰に働くと、腎臓で尿の濃縮が出なくなりおしっこの量が増加し、結果的に水を飲む量が増えます。プードルやダックスフンド、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、ボストン・テリアなどに多く見られます。

●慢性腎臓病
腎臓が徐々に壊れて水分の再吸収がうまくできなくなると、その結果おしっこの量が増え、体が水分不足になって頻繁に水を飲むようになります。

●子宮蓄膿症
メスでは、子宮に炎症が起こって膿がたまり、熱が出たり、化膿したりすることで毒素などが尿に出て、腎臓での尿の濃縮が妨げられます。その結果、尿量が増え水をがぶがぶと飲むようになります。お腹が張り、陰部から膿が出ることもあります。

●尿崩症
おしっこの量が急激に多くなり、水を飲む量が増える病気です。脳の機能障害によっておしっこの量を調整する抗利尿ホルモンが正常に分泌されなくなる「中枢性尿崩症」が本当の病気ですが、クッシング症候群や高カルシウム血症のように腎臓での尿の濃縮が妨げられる「二次性の腎性尿崩症」というものもあります。

早期発見のために健康診断を

多尿と多飲の症状に気づいたら、動物病院で診察を必ず受けましょう。
散歩に行った時に外だけでおしっこを済ませていると、異常に気づくのが遅くなってしまいます。日頃から犬のトイレは自宅に用意し、おしっこの回数や量、色、している時の様子などをきちんと観察しておくことが大切です。
また、クッシング症候群、糖尿病、慢性腎臓病などは中〜高齢犬で多く見られるので、特にしっかりと観察してください。早期発見のためにも、7歳くらいまでは年1回以上、7歳を越えたら半年に1回は健康診断を受けましょう。

(監修:石田卓夫先生)