データを測って記録して、愛猫の「いつも」の健康状態を把握しよう[獣医師アドバイス]

愛猫の体重や食欲、体温など、「いつも」の様子をしっかり把握できていますか? 言葉で不調を伝えることのできない愛猫の健康を守るためには、いつも側にいる飼い主さんが普段の健康状態を把握しておくことが大切です。愛猫の健康管理に役立つデータの自宅での「測り(量り)方」をご紹介します。

月に1〜2回は体重測定を!

肥満は「万病の元」といわれるとおり、太りすぎは体のいろいろな部分に負担をかけます。一方、食事の内容や量を変えていないのに体重が減少するのも注意が必要で、1ヶ月の間に5パーセントの体重減少がある場合は、何らかの病気が疑われます。体重4kgの猫なら5パーセントは200gですから人にとってはわずかな減少に感じられるかもしれませんが、猫にとっては深刻な問題になることもあります。

愛猫の体重測定は月1〜2回を目安に定期的に行いましょう。飼い主さんが猫を抱きかかえて一緒に体重を量り、次に飼い主さんだけの体重を量って引き算すれば、愛猫の体重がわかります。

体重が安定していても太りすぎややせすぎでは健康とはいえないので、体型もしっかり確認してください。適度な脂肪がついていて肋骨に触ることができる/上から見たときに腰が適度にくびれている/横から見たときにお腹がたるまずに引き締まっている状態が正常な体型の目安です。

フードは目分量ではなくしっかり計量しよう

毎日与える食事の量が一定でなければ、正確な体重管理はできません。キャットフードは目分量ではなく、計量カップや計量スプーンなどを使ってきちんと量って与えましょう。デジタルスケールで重さを量れば、さらに正確に与えることができるので理想的です。

キャットフードは種類によって粒の重さや大きさ、含まれるエネルギー量や給与量は異なるので、フードの種類を変更したときには必ず基本の分量を量り直してください。

飲水量もしっかり確認。増えてきたら要注意

猫はもともとあまり水を飲まない動物ですが、猫に多い慢性腎臓病をはじめとするいくつかの病気では、水を飲む量とおしっこの量が増える「多飲多尿」の症状が現れるので、飲水量の計量と観察は重要です。

暑いときやたくさん運動した後には水を飲む量が若干増えますが、1日の猫の飲水量の正常な範囲は体重1kgあたり50mL程度までが目安とされており、この量を超える場合は「多飲」と判断されます。

計量カップで水を量ってから水飲み容器に入れ、24時間後に残っていた水を再び計量して引き算することで、1日のおおよその飲水量がわかります。

バイタルサインをチェックしよう

「呼吸」「脈拍(心拍)」「体温」は「バイタルサイン(生命徴候)」と呼ばれ、今の健康状態を把握する基本的な数値情報です。バイタルサインの変化が、命に関わる重要な情報を示していることも多いので、自宅でチェックする方法を覚えておきましょう。

●呼吸数を測る 
猫の正常な呼吸数は、1分間に10〜35回が目安です。
猫が安静にしているときや寝ているときなどに、胸が上下する動きを数えます。「上下の動き」を1回の呼吸としてカウントし、10秒間数えて6倍するか、15秒間数えて4倍すれば1分間の呼吸数がわかります。

●心拍数を測る
心拍数とは1分間に心臓が拍動する回数のことです。猫の正常な心拍数は1分間に140〜220回が目安です。正常値の幅が広く、動物病院では興奮して高くなりがちなので、自宅で安静時に測定しておきましょう。
心拍数は動物病院では聴診器で測りますが、家庭では脈拍を測るとよいでしょう。人では手首で脈拍を計りますが、猫の場合は後ろ足の内側のつけ根のあたりにある大腿動脈に指を当ててトクトクという拍動を数えます。10秒間数えて6倍するか、15秒間数えて4倍することで1分間の心拍数を測ることができます。大腿動脈が見つけにくければ、胸(左前足の脇あたり)に手のひらを当てて感じた鼓動をカウントすることで測ることもできます。

●体温を測る
猫の平熱は人よりも高くて37.5〜39℃が目安で、子猫は高め、高齢猫ではやや低めです。平熱よりも1℃以上高ければ、熱がある状態だと考えられます。
動物病院の診察台の上では興奮して体温が高めになるので、普段の平熱を知るには家庭で測れるようにしておくとよいでしょう。猫の体温は肛門に体温計を入れて直腸温を測ります。体温計の先端にオリーブオイルやワセリンを塗ると挿入しやすくなります。シッポのつけ根を上に持ち上げると肛門が少し開くので、体温計の先1〜2cm程度入れて測定時間を待ちます。デジタル体温計を猫用に用意しておきましょう。耳の穴の中に入れて測るタイプの体温計や非接触のものもあります。

測った数値は記録しておこう

普段の健康な状態のデータを蓄積しておくことは、病気の早期発見の重要な手がかりになります。毎回の条件を揃えるために、計測はなるべく同じ時間帯に行います。愛猫の健康状態の指標となるこれらのデータ測定は月1回を目安に定期的に行い、結果をきちんと記録しておきましょう。

(監修:石田卓夫先生)