ライフステージ別のかかりやすい病気を理解して、しっかり予防を[獣医師アドバイス]
犬の平均寿命は14歳を超えていますが、子犬、成犬、高齢犬とライフステージによってかかりやすい病気も変わってきます。年齢に見合った健康管理をしっかり行うことが病気の予防につながります。
ライフステージってなに?
ライフステージとは、誕生してから、成長して年を重ねていく中での変化をいくつかの段階に区分した1つ1つの期間のことです。犬では大きく【成長期】、【維持期(成犬期)】、【高齢期(老犬期)】に分けられます。小型犬、中型犬、大型犬では成長のスピードも大きく異なり、小型犬は成長が早くて寿命も長く、大型犬では成長はゆっくりですが老化は早く訪れます。
ライフステージ別の年齢の目安は、【成長期】小型犬/〜10カ月、中型犬/〜1歳、大型犬/〜1歳半、【維持期】小型犬/10カ月〜8歳、中型犬/1〜7歳、大型犬/1歳半〜5歳、【高齢期】は小型犬/8歳〜、中型犬7歳〜、大型犬/5歳〜です。近年、犬も寿命が延びていることから、さらに小型犬12歳〜、中型犬10歳〜、大型犬8歳〜を【超高齢期】と区切ることもあります。
成長期 〜感染症に特に注意!
【成長期】は、子犬が生まれてから繁殖能力をもつ成犬になるまでの期間です。体が少しずつ成長していく過程にあり、体の機能はまだ十分に発達していません。
消化機能が未発達で腸内環境も安定していないため、食べすぎや食事内容の変化、ストレスなどちょっとしたことで「下痢」や「嘔吐」などの消化器症状がよく見られます。下痢や嘔吐は、「回虫」、「条虫」、「鉤虫」など体内に寄生する内部寄生虫や感染症が原因の場合もあります。糞便検査を行って寄生虫がいる場合は駆虫を行いましょう。
また、免疫機能がまだ十分に整っていないため、抵抗力が弱く、病気にかかると重症化しやすくなります。生後2〜3カ月頃までは母乳(初乳)に含まれる母親ゆずりの「移行抗体」(母子免疫)に守られていますが、徐々に自然消失して子犬自身の体内で作られる抗体に切り替わっていきます。移行抗体が切れる頃は「感染症」にかかりやすいので、ワクチン接種でしっかりと予防する必要があります。
さらに、皮膚の免疫力も弱いため、膿皮症や毛包虫症、皮膚糸状菌症、疥癬などの皮膚病にもかかりやすくなります。
成長期に丈夫な体を作るためには、栄養バランスの整った食事を与えることが重要です。十分に栄養が摂れないと骨格の成長を妨げたり、血中の糖分が低下して「低血糖症」を引き起こして衰弱することもありますので、食事管理をきちんと行いましょう。
維持期 〜肥満にならないようにしっかり管理
【維持期】は【成犬期】とも呼ばれ、犬としての体ができ上がり、成犬となって健康状態が一番安定している時期です。この時期に気をつけたいのが「肥満」です。肥満は万病の元といわれる通り、さまざまな病気の引き金となったり悪化の原因となります。食事と体重の管理を行い、この時期に肥満にさせないようにしましょう。この時期の積み重ねが高齢期の健康状態に大きく影響してくるので、健康管理をしっかり行ってください。
高齢期 〜機能が低下して病気にかかりやすくなる
小型犬は8歳、中型犬は7歳、大型犬は5歳を過ぎた頃から、少しずつ老化の兆候が現れます。平均寿命が14歳を越える今、その半分の7歳くらいで「高齢」とは少し早いと感じるかもしれませんが、小型・中型犬の7〜8歳は人間の年齢に換算すると40代半ば〜後半くらいで、人でも老眼になったり白髪が増えたり、生活習慣病が現れやすくなったりする年代です。犬もこの頃から白い毛が出てきたり、「白内障」になったり、少しずつさまざまな機能が低下する老化現象が始まり、10歳頃からさまざまな病気にかかりやすくなります。
心機能が低下すると、小型犬では「僧帽弁閉鎖不全症」、大型犬では「拡張型心筋症」を発症することがあります。また、甲状腺の働きが鈍くなることによって起こる「甲状腺機能低下症」、膵臓から分泌されるインスリンが減少したり、効き目が弱くなったりして発症する「糖尿病」、腎臓が徐々にこわれて機能が低下する「慢性腎臓病」、関節の軟骨成分が徐々に損傷することで起こる「変形性関節症」なども中高年以降の犬に多く見られる病気です。
さらに高齢になると「リンパ腫」や「肥満細胞腫」「乳腺腫瘍」などの悪性腫瘍も発症しやすくなります。超高齢期の犬では老化による脳の萎縮などによって起こる「認知症」も増えています。
成犬は年1回以上、高齢犬は年2回以上の健診を!
このようにライフステージによってかかりやすい病気の傾向は異なりますが、個体差もあり、ライフステージに関係なく病気が現れることもあります。かかりやすい病気にはどんなものがあるかを知り、その症状を確認しておくことで、家庭での健康管理や日頃の観察に役立てることが大切です。愛犬が今、人の年齢に換算するといくつくらいかを意識すると、体の状況がイメージしやすくなります。
また、病気の早期発見のためには動物病院での定期健診は欠かせません。成犬では年1回以上、高齢犬では年2回以上の健診を受けるようにしましょう。
(監修:石田卓夫先生)