保護犬との暮らし、困ったときはどうする?年代別の注意と心がまえ[ドッグトレーナーアドバイス]
保護犬には飼い主さんがいた家庭犬もいれば、ブリーダーのところにいた繁殖犬、野山で生まれ育った野犬もいます。それぞれ異なる背景をもった保護犬を譲り受けるときの心がまえを再確認。迎えたあと困ったことがあっても対処できるように準備をしておきましょう。
保護犬を迎える心がまえとは?
●犬に合わせて柔軟に対応する
保護犬によっては生まれ育った背景が不明なので、人にとって望ましい行動を教えたりしつけたりすることが難しい場合もあります。
「犬を迎えたらこんなことをしたい」という過剰な期待や「こういう犬に育つはず」という思い込みはもたず、迎え入れた犬の気持ちに配慮して柔軟に対応していく心構えと、大切に育てる覚悟が必要です。
●本性が出るまで気長に見守る
保護犬は、それまでとは異なった環境で生活するようになった不安や緊張から、本来の性格がなかなか現れない場合があります。トライアル期間ではわからなかった性格が、迎えて3ヶ月後ぐらいから現れることもあるので長い目で見守っていきましょう。
犬の年代別・暮らしの注意点
●性成熟前の子犬:柔軟性があってしつけやすい
生後半年くらいまでの性成熟を迎える前の子犬は、柔軟性があり許容量も大きいため、しつけで人間社会に適応させやすいのが特長です。特に生後12週齢までは社会化期と呼ばれ、この時期に経験したことは生涯を通じて慣れ親しみやすくなります。
●性成熟を迎えた思春期の犬:気持ちが不安定な場合も
生後6ヶ月頃から1歳までの犬は、性成熟を迎え思春期になります。思春期の犬は、ホルモンの変化や脳の再編成が起こるため、気持ちが不安定になりやすく、周りの刺激が気になって落ち着かなくなったり、飼い主の指示を聞きづらくなったりすることがあります。やがて気持ちも落ち着いてきますが、この時期は飼い主さんにとって世話が大変になることもあります。
●成犬:家庭に合うタイプを見つけられる
1~7歳の成犬は性格がほぼ定まっているので、希望に近い、家庭に合うタイプの犬を見つけやすい年代。ただし状況によって性格や示す態度が変わったりすることもあるので、時間をかけて見極めていきましょう。子犬のころと比べると柔軟性が低くなるため、しつけで変えられないこともあります。
●老犬:介護と配慮が必要になる
7歳を超えると病気を抱えている可能性が高くなるので、介護や看取りが近いことを受け入れる覚悟が必要です。活動量が低いので飼い主さんの体力的な負担は少ないかもしれませんが、柔軟性の低さや世話などで配慮が必要になります。
迎えてから困りごとが起きたときの対処
●信頼できる専門家に相談する
保護犬との暮らしで困ったことがあれば、犬に応じて柔軟に対応できる専門家に相談しましょう。飼い主さんへの依存が強くなることもあるので、専門家によるアドバイスが必要になることも。JAHA認定家庭犬しつけインストラクター、CPDT(ドッグトレーナー)取得者、日本獣医動物行動研究会に所属する獣医師が安心。保護犬を迎える前に相談するのも一案でしょう。
●犬の預かりサービスを活用
ブリーダーのところにいた繁殖犬や野山にいた野犬は、複数頭で暮らしていたことで、飼い主さんの家庭に迎えられるとひとりぼっちになって不安が強くなることも。吠えたり留守番ができなくなったりするケースもあります。飼い主さんだけでは対応しきれず負担が大きくなることもあるので、専門家に相談すると共に、犬の預かりサービスなどを利用しながら解決を目指しましょう。
●生活環境を見直す
犬のために使える専用の部屋を設けられると、噛みつく場合の安全確保やトイレトレーニング初期の環境整備など、コントロールしやすいケースもあります。
ただし屋外での暮らしが長い犬は、室内での生活にストレスを感じることがあります。犬を優先して生活環境を整えることが重要です。
飼い主さんは愛情深く接しているつもりでも、保護犬にはアプローチが積極的すぎて落ち着かないことがあります。それが家庭への安心感を阻害することも。専門家のサポートを受けながら、焦らず気長に寄り添っていきましょう。
(記事監修:鹿野正顕先生/スタディ・ドッグ・スクール代表)