愛犬のよだれがいつもより多い。単なる生理現象?それとも何かの病気?[獣医師アドバイス]
犬はよくよだれを垂らしていることがあります。とくに大型犬や短頭種はよだれが多いことで知られています。ほとんどのよだれは心配のない生理現象ですが、あまりに多い場合は、体調不良や病気が疑われます。危険なよだれを見逃さないために、どんな病気の可能性があるのか知っておきましょう。
あまり心配のない生理現象としてのよだれ
よだれは口に溜まった唾液が流れ出たものですが、通常、どんなときに増えるのでしょうか?
唾液には食べたものを胃へ運び消化を促す働きがあります。そのため、食べ物を目にしたりにおいをかいだりすると、反射的に唾液が増えてよだれが出てきます。
また、犬は人間のように汗をかいて体温調節ができないため、口をあけてハァハァとパンティング(あえぎ呼吸)をして呼吸の中の水分を蒸発させ、その気化熱で体温を下げています。暑いときや運動後などにはパンティングに伴い、よだれが増えます。
よだれは車酔いでも出ます。吐き気を催したときに唾液の分泌を促す神経も刺激されるためです。車内で犬がよだれを流していたら、休憩をとるようにしましょう。
犬がリラックスしているときにも副交感神経が優位になって、サラサラした水っぽい唾液がたくさん出ます。犬が寝ているときによくよだれの水たまりを作っていますよね。これらは生理的な原因によるよだれで、異常なものではありません。
よだれは病気が原因で出ることもある
対して、病気が原因で出るよだれには次のようなものがあります。
●口腔内の異常
異常なよだれは、口の中の病気が関連していることが多いです。よくある歯周病や口内炎、口腔内腫瘍でもよだれの量が増えます。よだれがにおったり、血が混じることもあります。
●誤飲
ボールなどの異物が食道に詰まって、吐こうとしてよだれが大量に出ることがあります。また、有害物質を誤って口にして、嘔吐や泡状のよだれ、けいれんなどの中毒症状を起こすことも。いずれも緊急の処置を要します。
●熱中症
通常のパンティングは生理現象ですが、夏場、ぐったりして大量のよだれを出しているときは、熱中症が疑われます。体を冷やし、水を飲ませる応急処置をして、すぐに動物病院へ。
●胃捻転
胃捻転は早食いや食後すぐの運動などが原因で、胃がねじれてしまうものです。お腹がふくれ、吐こうとして何も吐けず、よだれをだらだら流して、落ち着きなくうろつきます。大型犬に多い病気で、緊急処置をしないと命に関わります。
●脳神経系の障害
てんかんや顔面神経麻痺など、脳神経系の異常によってもよだれが増えます。
●唾液腺の異常
唾液を分泌する唾液腺に炎症などの異常が起きると、だらだらとよだれが流れ出ることも。
●その他
胃酸過多、腎臓病や肝臓病、膵炎などの内臓の病気で吐き気を催し、よだれが増えることもあります。
よだれと合わせてチェックしたい症状
よだれがいつもより多いときはさまざまな病気の可能性があり、なかには緊急性の高いものもあります。よだれと合わせて、次のような症状が見られる場合は、できるだけ早く動物病院で受診してください。
●口臭がする、よだれがにおう
●よだれに血や泡が混じっている
●ぐったりしている
●呼びかけに反応がない
●けいれんが見られる
●嘔吐する、あるいは吐きそうにするが吐けない
●お腹がふくれている
・・・など
(監修:石田卓夫先生)