犬がお尻を地面にこすりつけたり、お尻のニオイが気になるときは・・・肛門のうをチェック![獣医師アドバイス]

犬がしきりにお尻を地面にこすりつけていたり、お尻から便とは違う悪臭がしたり・・・。そんなときは、なんらかの病気やトラブルの可能性があります。お尻は毎日の排せつに関わる大切な部位。異常に早く気づいてあげましょう。

地面にこすりつけるのは、お尻の違和感から

犬がお尻を地面にこすりつけながらズリズリと前に進む通称“お尻歩き”は、お尻にかゆみや痛みなどの違和感があるときの行動です。この行動が見られたら、すぐにお尻の周辺をチェックして、便や異物が付着していないか、傷やただれ、腫れなどがないか、お尻から悪臭がしないかなど、よく確認してください。

多いのは、肛門のうに分泌液が溜まっているケース

お尻の違和感の原因として最も多いのは、肛門のうに分泌液が溜まっている場合です。犬の肛門の斜め下(4時と8時の位置)には、肛門腺という一対の臭腺があり、そこから個体識別のための独特のニオイのする分泌液が出て、肛門のうという袋に溜まります。これ自体は病気ではありませんが、犬はお尻を気にしてなめたり、床にこすりつけたりします。

この分泌物は通常、排便時に一緒に排出されますが、自力でうまく排泄できない、溜まりやすい体質の場合には人が定期的にチェックして絞ってあげる必要があります。
分泌液が溜まりすぎると、肛門のう炎を発症し、ひどい場合は破裂して、皮膚を破って血や膿が出てくることもあります。

肛門周辺は細菌感染を起こしやすい

肛門周辺は不衛生になりやすく細菌感染しやすいため、肛門のう炎以外にも、炎症を起こすことがあります。
肛門周囲炎は、肛門のまわりに炎症が起きる病気で、赤くなったり、傷やただれ、腫れなどが見られ、化膿して悪臭を放つこともあります。
肛門の周囲には、肛門を囲むように、肛門周囲腺と呼ばれる皮脂などを分泌する細い導管がいくつもあります。そこに炎症が起きるのが肛門周囲腺炎で、強いかゆみがあるため、犬はしきりにお尻を地面にこすりつけ、その結果、炎症を悪化させて、痛みから排せつ自体が困難になることも。

メス犬が陰部を気にするときも要注意!

メス犬が外陰部を気にして、しきりになめたりこすりつけたり、悪臭のする化膿したおりものなどが見られるときは、膣炎や子宮蓄膿症かもしれません。子宮蓄膿症は命に関わることもある病気なので、とくに避妊手術をしていない高齢犬は要注意です。多飲多尿や嘔吐など、他の症状にも気をつけて、異常を見逃さないようにしましょう。

寄生虫感染でも、お尻に違和感

犬には、回虫、鉤虫(コウチュウ)、瓜実条虫(ウリザネジョウチュウ)など、腸内に寄生するさまざまなお腹の虫がいますが、これらの寄生虫に感染しているときも、お尻をこすりつける行動が見られます。虫体が肛門近くに移動してきたときにムズムズしたり、瓜実条虫の場合は片節と呼ばれる虫体の一部が肛門から排出されるときにかゆみを感じるためです。

お尻まわりのトラブルを予防するには

お尻まわりのトラブルを予防するには、普段から肛門周辺を清潔に保ち、炎症を起こさないようにすることが大切です。下痢や軟便が続くときは肛門まわりの毛をカットして、汚れにくくしたほうがよいでしょう。
またお腹の虫も、動物病院で定期的に検査・駆虫を行っていれば安心です。

(監修:石田卓夫先生)