猫の鼻血は異常事態。傷、鼻炎、腫瘍、それとも内科系の病気から?[獣医師アドバイス]

人は興奮したり、のぼせたり、鼻の中が乾燥していたりと、とくに病気でなくても鼻血が出ることがあります。しかし猫は、人と違ってめったに鼻血を出しません。鼻血がみられるときは、何らかの病気の恐れがあります。どんな病気やトラブルが考えられるのでしょうか?

鼻の中の「傷」から出血

鼻の中に異物が混入して粘膜が傷ついたり、鼻をぶつけて鼻腔内に傷を負ったり、鼻骨を骨折したときなども鼻血が出ます。場合によっては多量の出血がみられることもあります。

「鼻炎・副鼻腔炎」では、くしゃみや鼻水と混じって出血

細菌や真菌、ウイルス感染などによって鼻炎を起こすと、鼻の粘膜が刺激されて、くしゃみや鼻水などの症状が出ます。最初は透明のサラサラした鼻水ですが、次第に黄色や緑色の膿まじりのドロッとした鼻水になり、血液が混じることもあります。

副鼻腔炎は、鼻炎が進行して鼻の奥にある副鼻腔という空洞まで炎症が広がったもので、悪化すれば血液まじりの膿状の鼻水が出たり、鼻のまわりが腫れることも。副鼻腔に膿が溜まった状態を蓄膿症といいます。

「歯周病」から来る鼻血も

歯周病が進行し、口と鼻の間にある歯槽骨が溶けて、口腔と鼻腔がつながってしまう状態を「口鼻瘻管(こうびろうかん)」といいます。やはりくしゃみや鼻水、鼻血などの症状が見られます。

片方からの少量出血が続く「鼻腔内腫瘍」

鼻の中に腫瘍ができることで鼻血が出ることもあります。鼻腔内腫瘍はそれほど多い腫瘍ではありませんが、鼻の片方から少量の出血が続くときは、その恐れがあります。

こんな「基礎疾患」に要注意!

次のような内科系の基礎疾患がある場合も鼻血が出やすくなります。

●肝臓病
肝臓では、血液を固めるのに必要な血液凝固因子が作られています。肝機能が低下すると、この凝固因子が作られなくなり、血を固める作用が低下して出血しやすくなります。

●腎臓病
腎機能が低下すると、余分な水分やナトリウムを尿として排せつできなくなり、血液量が増えて高血圧になるため、鼻血が出やすくなります。

●糖尿病
糖尿病になると、糖分の多いドロドロした血液になって血流が悪くなり、血管がもろくなってしまいます。そのため少しの刺激によっても鼻血が出やすくなります。

●甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される内分泌系疾患で、高齢猫に多く見られます。興奮状態が続き元気そうに見えますが、食欲旺盛なのにやせてくる、多飲多尿、脱毛、嘔吐、下痢などの症状のほか、血圧が上昇し鼻血が出やすくなります。

「血液の異常」の可能性も

●赤血球増加症
赤血球増加症は血液中の赤血球が増加しすぎる病気で、血液の粘度が高まって流れにくくなり、高血圧になって鼻血が出やすくなります。

●血小板減少症
血液凝固の役割を担う血小板が著しく減少する病気で、ケガをしたときに出血が止まらなくなったり、皮膚に紫斑や点状出血が起きたり、鼻血や歯肉出血、血便、血尿などが出ることも。

鼻血を出したときのチェックポイント

愛猫が鼻血を出したときは、動物病院でしっかり説明ができるよう、次のことをチェックしておきましょう。

●鼻血が出ているのは片方か両方か?
一般に、鼻腔内腫瘍や口鼻瘻管などでは左右どちらか一方から、血液の凝固異常なら両方から出血します。

●鼻血の出方や出血の期間は?
一時まとまった出血があってもその後は出なかった場合、鼻の中の外傷の恐れがあります。いったん止まっても、出血をくり返すようなら何らかの病気が疑われます。

●出血量はどれぐらいか?
一度に多量の出血があった場合は外傷や骨折などが疑われ、少量の出血が長く続きときは腫瘍の恐れも。

猫にとって鼻血は異常事態です。「たかが鼻血ぐらいで・・・」と軽く考えず、必ず動物病院で診てもらいましょう。

(監修:石田卓夫先生)