犬が喜ぶ遊び方で幸福度がアップ!狩猟をイメージしたおもちゃと動きで楽しく遊ぼう[ドッグトレーナーアドバイス]

遊びは狩猟本能を満たす全身運動で、飼い主さんとのコミュニケーションにもなります。散歩と同じように習慣にしましょう。

犬にとって遊びの役割とは?

犬にとっては狩りを模倣することが遊びになります。生まれもった狩猟本能と、「体を動かしたい」という運動欲求も満たせます。遊びは全身運動なので、実は散歩よりも体力を発散できるのがメリット。
さらに遊びを通じて飼い主さんと楽しい時間を共有することで、コミュニケーションをはかることもできます。犬は人と遊ぶことを好み、遊んだ後は犬の血中のオキシトシン(幸せホルモン)の濃度が猫の5倍も上昇するという研究結果もあるほどです。

犬同士の場合、飼い主さんのもとに来るまでは母犬やきょうだい犬とじゃれ合うことで力の加減や対犬関係を学びます。また、飼い主さんのもとに来てからも、子犬の頃から同じぐらいの月齢の多くの犬種と遊ぶ経験をもつことで、さまざまな犬との交流の仕方を学びます。
成犬や老犬にとっても、遊びは気が合う仲間との交流の時間になりますが、もちろん個性があるため、他の犬との遊びをあまり好まない犬もいます。

犬はとくに人との絆を深められるように改良されたため、他の動物よりも人と遊んだり交流したりする欲求が強い傾向があります。

狩猟行動を模した遊びとは?

犬の狩猟行動は、「においをたどって獲物を見つける→追いかける→捕まえて噛みつく→仕留めて食べる」という流れで行われます。複数の動作がつながって一つの狩猟行動になるため、この流れを体験できる遊び方のほうが犬の充実感は大きくなります。
これらの複数の行動のうち、どの行動を強めるかによって犬種の改良がおこなわれてきたため、レトリーバー犬種が追いかけることが好きなように、犬種によってとくに好む動作もあります。

狩猟行動の各動作を模した遊びには、例えば以下のようなものがあります。

においをたどって獲物を見つける:
宝探しゲームや、ボードゲーム型の知育おもちゃなど。
獲物を追いかける:
ボール投げや追いかけっこ、ディスク、アジリティーなど。
捕まえて噛みつく:
引っ張りっこ遊びやプロレスごっこなど。
仕留めて食べる:
おもちゃを噛んで振り回したり破壊したりする動作など。

ポイントを押さえてもっと楽しく遊ぼう!

犬が喜ぶ遊び方にはちょっとしたポイントがあります。犬が「もっと遊びたい」と思う腹八分目程度で終わりにするのがコツ。おもちゃを与えっぱなしにすると誤食の危険があるので、最後は必ず片付けてください。

●引っ張りっこ遊び

【おもちゃの選び方】
綱引きのように引っ張り合う遊びなので、犬の歯が食い込んで噛める硬さと素材、口の中に入れてしっかりと噛むことができる大きさと形状のおもちゃを選びましょう。犬の口に近いところを人が持つと、取られるのではないかと不安になります。犬の歯が人の手に当たるのを防ぐためにも、なるべく長め(1m程度)のおもちゃを用意しましょう。

【遊び方】
1)獲物の動きに見立てて、地面を這うようにおもちゃを動かす。
2)犬にある程度おもちゃを追いかけさせたら噛ませる。
3)逃げようとする獲物の動きに見立てて、小刻みに動かす。
4)犬におもちゃを渡してひとりで噛んだり振り回したりして遊ばせる。
5)おもちゃの端をつかんで遊びを再開する。
6)遊びを終わりにするときは、人が無言で動きを止める。犬がつまらなくなっておもちゃを放したらほめて遊びを再開する。これを数回繰り返してから終了。

●宝探しゲーム

【楽しむコツ】
宝(おやつ)を隠して犬に探させるゲームです。最初はやさしく、徐々に難易度を上げていくのがポイント。犬が宝を探知したときに「見つけた!」と知らせてくれるとよりゲームを楽しむことができるので、今回は「オスワリ」で知らせてくれる方法をご紹介します。

【準備】
紙コップやプラスチックカップなどの容器を用意し、おやつのにおいが通るように小さな穴を空けます。

【遊び方】
1)穴を空けた紙コップを1つ、中におやつを入れて床に置き、犬が紙コップの前まで来たら「オスワリ」の合図をかける。
2)犬が紙コップの前で座ることができたら、紙コップの中のおやつをごほうびとして与える。
3)手順の2を繰り返し、「オスワリ」の合図をかけなくても紙コップの前に来たら座れるようになるまで練習する。
4)合図をかけなくても座れるようになったら、穴を空けた紙コップを2つに増やし、1つにおやつを入れる。おやつが入っている紙コップの前で座ることができたら与える。
5)おやつの入っていないほうに座ったら、はじめからやり直す。失敗を経験することで、「においがするほうに座ればおやつがもらえる」ということに気づくため、失敗しても決して怒ったり大きな声を出したりせず繰り返し練習する。
6)2つの紙コップで成功したら、穴をあけた紙コップの数を少しずつ増やしていく。上手に探せるようになったら、穴を空けない紙コップでチャレンジしてレベルを上げてみる。

犬種や性格、年齢によって好む遊び方がある

猟犬や牧羊犬などの作業に合わせてさまざまな犬種が生み出されました。そのため犬種や性格によって好む行動や得意な動作が異なります。成長に合わせた注意点もチェックしましょう。

●犬種による好み

トイ・プードル:
追いかけたり触れ合ったりするのが好きなので、ボール投げやプロレスごっこのような遊び方がおすすめ。

チワワ:
噛みついて振り回す引っ張りっこ遊びなどを好む傾向がある。

ダックスフンド:
噛みついたり破壊したりする動作を好む。

柴犬:
ひとりで狩猟行動を模倣して遊んでいることが多い。人のほうから遊びに誘ってコミュニケーションを図ることが大切。だが、警戒心が強いためおもちゃを無理に取り上げたりしない。

ゴールデン・レトリーバー:
ボールなどを追いかけることを好む。投げてほしいので持ってくる動作も得意。

ウェルシュ・コーギー・ペンブローク:
牧畜犬は追いかけて噛みつく動作を強められている。噛んで破壊したい欲求も強く、引っ張りっこ遊びがおすすめ。

●性格による好み

活発な性格の犬には、追いかけっこや引っ張りっこ遊びなど動きのある遊び方が合っています。おとなしい性格の犬は活動的な遊びに興味をもたないことがあり、食べ物を活用した宝探しゲームなどを好む傾向があります。

●年齢による好みや注意点

子犬の頃の経験が遊び方の嗜好性に影響するので、成長に合わせて適切なおもちゃを選ぶことがポイントです。口の大きさや噛む力に合わせて、おもちゃのサイズを大きくしていったり、硬くしていったりします。 成犬や老犬は好みの遊び方が決まっていることが多いので、飼い主さんが合わせてあげるのも一案。食べ物のにおいをたどる「宝探しゲーム」は、体力が衰えてきても楽しめる遊びなので、老犬にもおすすめです。

おもちゃの管理の仕方も大切

遊びに飽きさせないためには、おもちゃの管理方法も大切です。おもちゃを「ひとり遊び用」と「人と一緒に遊ぶ用」に分け、「人と一緒に遊ぶ用」のおもちゃは出しっぱなしにせず、遊びが終わったら犬が取り出せない場所にしまいます。犬が常に取り出せる状態だと、おもちゃに対するモチベーションが下がるうえ、破壊して誤食してしまう危険があるからです。

ひとり遊び用のおもちゃは、壊れにくく中におやつが入れられるような天然ゴム製の「コング」などの知育玩具を選びましょう。

犬は飼い主さんと一緒に遊ぶことで幸せを感じます。おもちゃをたくさん買い与えるよりも、飼い主さんが遊び方を創意工夫することが重要。互いに楽しい時間を過ごしましょう。

(記事監修:鹿野正顕先生/スタディ・ドッグ・スクール代表)