猫と飼い主さんの命を守る、災害に備えた室内環境づくり[獣医師アドバイス]

大きな地震や、大雨や洪水など、各地で相次ぐ災害。気候変動による風水害の増加傾向もあり、日本で暮らすうちは、いつ誰がどこで被災してもおかしくありません。こうした状況の中、飼い主さんと大切な愛猫の命を守るには、避難のための備えだけではなく、室内の環境を整えて安全を確保する対策も大切です。

飼い主さんの安全確保が最優先!

「自分の身に代えても愛猫を助けたい!」という想いもあるかもしれませんが、お世話してくれる飼い主さんを失っては、猫はその後生きてくことができません。地震が起きたら揺れが収まるまで丈夫なテーブルの下に身を隠すなど、必ず飼い主さんの身の安全の確保を優先しましょう。

家具の配置を工夫したり、倒れないように固定

大きな地震によるおもな負傷理由は、家具の転倒や落下によるものです。以下のような工夫は、人だけではなく、猫の身を守ることにもつながります。

●寝ている人や猫が下敷きになりやすい方向や位置に家具を置かない
●逃げ道を確保するため、玄関などの出入口に倒れそうな家具を置かない
●タンスなどの上に、危険なもの(重量のある猫の食器など)を載せない
●家具を転倒防止器具などで固定して、倒れにくくする
●突っ張り式の転倒防止器具やキャットタワーは、緩んでいないか定期的にチェックする
●重い物(食器棚では大きい陶器、本棚では百科事典など)は下の方に収納し、重心を低くする
●割れた食器やガラスで、人の足や猫の肉球が傷つかないように、食器棚などのガラスに飛散防止シートを貼ったり、収納物が滑り出さないように滑り止めシートを貼る など

住居自体を倒壊させにくくする方法として、耐震補強の工事や耐震シェルターの設置があります。これらは高額になりますが、補助金を活用できるケースも多いので、自治体のサイトを調べてみるといいでしょう。

人の手の届かない場所に、猫が隠れないように

自宅を離れて避難所などへ向かう場合、猫をいっしょに連れていきたくても、怯えて高所や家具の裏などに隠れてしまっていることがあります。脚立を使ったり、家具を動かしたりすることで捕獲できればいいのですが、幅広のベッドの下や食器棚などの大型家具の裏、天袋の奥にひっそりと身を隠してしまうと、なかなか捕まえることができません。このような「人が一切手を出せない場所」には、猫が入り込めないようにしたほうがいいでしょう。

キャリーケースを隠れ家にする方法も

避難のためには、猫を運ぶキャリーケースが必要になります。そのキャリーケースを押し入れなどに収納せず、ふだんから扉を開けた状態で室内に置いておくのも一案です。猫にとって「ここなら安心できる!」という居場所になっていれば、いざというときに自分から入って隠れてくれることもあります。置き場所は、家具が倒れてくる心配がないところへ。中にブランケットを入れたり、猫がベッド代わりにくつろげる空間にしてあげましょう。

パニックになった猫が脱走しないように

過去の大きな地震では、猫が揺れに驚いてパニックになり、脱走してしまった事例が多数報告されています。窓やベランダ、玄関に、猫を脱走させない対策をしましょう。

●網戸に破れ目がないかも確認する
●猫が自分で網戸を開けないように、網戸用ストッパーで固定する
●玄関に脱走防止用の扉を設置する
●ベランダの柵にネットを張っておく など

しかしながら、力が強い若いオスなどでは、網戸を突き破って脱走してしまうことがあります。また、とくに高層階では、激しい横揺れで窓が開いてしまい脱走するケースもあるようです。
以下のような対策をすると、さらに安心でしょう。

●窓の手前に脱走防止用の柵を取り付ける(100円ショップで購入できる突っ張り棒とワイヤーネットを組み合わせて手作りできます)
●窓自体にストッパーを付けて、猫の顔よりも狭い幅しか開けられないようにする など

それでも脱走してしまう可能性を考えて

脱走対策をしたとしても、家屋が倒壊してしまったり、避難所でケージへ移すときにスルリと抜け出してしまう…という事態もありえます。マイクロチップを装着させたり、首輪に迷子札を付けて、身元を証明できるようにしておきましょう(猫のマイクロチップ装着は、2022年6月1日から販売業者に対しては装着が義務づけられ、一般の飼い主さんも努力義務となりました)。

(記事監修:服部幸先生/東京猫医療センター院長)