知ってますか? 猫の「食事」と「アレルギー」の関係[獣医師アドバイス]
「食物アレルギー」とは、特定の食べ物に含まれる原因物質を摂取することによって、本来、体を守る働きをする免疫システムが過敏に働いてしまい、体に不利益な症状が現れること。この原因物質を「アレルゲン」と呼びます。人にも食物アレルギーがあるように、猫にも食品に含まれる物質がアレルゲンとなって食物アレルギーを起こすことがあります。
猫の場合、皮膚や消化器系の症状が表れる
猫が食物アレルギーになった場合の代表的な症状は…
●かゆみや皮膚炎、脱毛
●嘔吐や下痢
です。強いかゆみが頭部や首などに表れやすく、猫がかきむしったり、何度も噛む・なめるしぐさから、飼い主さんが異変に気づくことがあります。食物アレルギーというと嘔吐や下痢といった消化器系の症状を真っ先にイメージするでしょうが、それ以外にも猫では激しい皮膚のかゆみが出るのです。
アレルゲンは、牛肉、乳製品、魚などに含まれる「タンパク質」
人ではエビやカニなどの甲殻類、ソバ、卵、小麦、ピーナッツなどがアレルギーの発症に関わる食品としては有名ですね。猫では、「牛肉」「乳製品」「魚」に含まれる動物性のタンパク質が一般的なアレルゲンとして知られています。鶏肉や卵、穀物や大豆や小麦などの穀類がアレルゲンとなることもあります。
アレルギーが疑われる場合、食事管理で対応します
食物アレルギーは一生付き合っていく病気。疑われる症状があればまず受診し、必ず獣医師の指導のもと食事管理を行いましょう。基本的な対処としては、アレルゲンとなる原材料が含まれない「除去食」に切り替えます。
これまで口にする機会の多かったタンパク質が、原因となっている可能性が高いです。たとえば牛肉のフードばかりを与え続けていたケースなど、アレルゲンがある程度判断できる場合は、異なる種類の、できるだけ消化がよいタンパク質のフードを与えながら症状が表れないか観察して確かめます。一般的な動物性タンパク質の代わりにアヒルなどを使用したり、とうもろこしや小麦の代わりに米やタピオカを使用した「新奇タンパク質」の療法食に切り替えることもあります。
また、タンパク質の分子をアミノ酸まで人工的に分解してできるだけアレルギーを起こしにくくした「加水分解タンパク質」の療法食も開発されていて、アレルゲンがわからない場合などに使用されます。たとえば鶏肉のアレルギーであっても、加水分解された鶏肉であれば反応を示しにくいと考えられます。
グレインフリーは食物アレルギー対策になる?
最近では、穀物(または穀類)を含まない「グレインフリー」のフードが増えていて、食物アレルギーの心配から、グレインフリーに替える選択をする飼い主さんもいます。
たしかにグレインフリーは、穀物の食物アレルギーを避けることができますが、猫では穀物よりも、肉や魚といった動物性タンパク質がアレルゲンとなることが多いです。飼い主さんの独自の判断でグレインフリーのフードを与えても、アレルゲンが穀物以外であれば、症状は改善しません。心配な症状があれば、必ず獣医師に相談しましょう。
(記事監修:服部幸先生/東京猫医療センター院長)