「食べていれば安心」は過信。食欲があってよく食べるのにやせていく時には要注意![獣医師アドバイス]

食事をしっかり残さず食べていて、肥満にならなければ安心と思っていませんか? ずっと同じ体重を維持できていれば心配はありませんが、食欲旺盛でよく食べているのにやせていく病気もあります。

栄養が体内に十分に吸収されずにやせる

やせるということは筋肉(除脂肪体重)または脂肪の減少を意味します。体重を維持するのに十分な栄養が体に吸収されずに不足している状態です。そもそも食事の量が足りていない場合や食事の栄養バランスが極端に偏っていれば、一定量を与えていても必要な栄養が満たされずにやせてしまうということもあります。食べ盛りの子猫もたくさん食べなければやせてしまいますし、妊娠中や授乳中の母猫には、胎児や子猫に与える母乳を作り出すために高カロリーの食事を与えないと栄養不足となり、食べてもやせることがあります。けれども、成猫で、食事の量や内容を変えずにしっかり食べているにもかかわらず、それまでの体重を維持できずにやせていく場合には、栄養分が体内でしっかり吸収されていない、あるいは吸収した栄養分を体内で利用できていない状態で、背後に何らかの病気が潜んでいると考えられます。

やせすぎの体型チェック

猫の体型を見て、肋骨や腰のくびれがはっきりとわかる状態はやせすぎです。栄養状態が悪いときは腰椎や骨盤などが浮き出て、横から見たときにお腹も凹んできます。筋肉だけが落ちている場合は背骨の凸凹が触れるようになります。しっかりと食べているのにどんどんやせていくときには、下痢や嘔吐がみられないか、水を飲む量が増えていないか、やたらと活発になって活動量が増えていないかなど、他の症状を合わせて確認しましょう。

食べるのにやせていく原因

猫は夏になると暑さによって食欲が落ちてやせることもありますし、高齢になるとやせることもあり、やせるからといって必ずしも病気とは限りません。ただし、しっかりと食べているのにやせていく場合には、次のような病気の可能性が考えられるので、動物病院で相談しましょう。

●甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、10歳以上の高齢の猫に多くみられます。新陳代謝が促進されて、急に活動的になって落ち着きがなくなり、食欲も増してガツガツ食べるようになりますが、体重は減少していきます。多飲多尿、下痢や嘔吐、脱毛などの症状もみられます。

●糖尿病
インスリンの量が低下して血糖値が上がる病気です。水をたくさん飲み、おしっこの量が増えるのが典型的な症状で、食欲旺盛になりますが、症状が進むと食べてもやせるようになり、だんだん食欲も低下して元気がなくなります。下痢や嘔吐などの症状もみられます。

●寄生虫症
回虫や条虫などの寄生虫が体内に寄生していると、いくら食べてもお腹の虫に栄養をとられてしまい、やせていきます。消化管に炎症が起こり、下痢や嘔吐などの症状がみられることもあります。

●慢性腎臓病
初期はおしっこが多くなり、水をよく飲み、食べるのにやせていきます。次第に吐くことも多くなり、食欲も低下し、さらにやせます。

●慢性胃腸炎
慢性的に軽い下痢が続くと、食べても栄養が十分に吸収されずにやせていきます。

●食道炎・巨大食道症・食道狭窄症
食道に炎症が起こる食道炎や、食道が広がる巨大食道症、食道の一部が狭くなる食道狭窄症では、食欲はあっても食道の異常でうまく飲み込むことができずに、食べても食後に食べ物を吐き出してしまいます。そのため、やせて衰弱していきます。

●ストレス
他の動物や家族が新たに増えた、引っ越しをしたなど、急激な環境の変化がストレスとなって下痢が続き、やせていくことがあります。

定期的に体重測定を

食事内容と量を変えていないのに、1カ月に5%以上の体重減少がみられる場合は、なんらかの病気の疑いがあります。体重4kgの猫の場合、5%は200gです。人にとってはわずか200gと思われるかもしれませんが、猫にとってみたらこれはとても深刻な減少なのです。また老猫では、消化機能が悪くなり、代謝の効率も悪くなるため、腎臓病がある場合を除き、タンパクはさらに多めに必要になります。
体重の減少を見逃さないために、1カ月に1回は愛猫の体重測定を行いましょう。正確な体重の増減を知るためには、食事量の管理も重要です。フードを目分量ではなくきちんと計量して与えることで、体重の変化にも気づきやすくなります。

(監修:石田卓夫先生)