あれ、いつものフードを食べない…。考えられる理由と対処法は?[獣医師アドバイス]
猫の祖先は小動物を1匹ずつ捕まえて食べていた習性があり、現在、私たちと暮らす猫も「食べたいときに食べる」のが本来の食事スタイルといえます。なので、多少の食べムラはあって当然であり、問題ありません。ただし、「まったく食べない」「ほとんど食べない」「いつもより大幅に食べない」というときは、何か理由があるのかもしれません。猫の食欲が落ちるよくある原因と、それぞれの対処法を解説します。
食べない理由1:病気や痛みが原因で
人でも体調がイマイチというときに食欲が落ちるように、猫も体調が悪いと食欲が落ちます。誤食や中毒、抜け毛の飲み込み過ぎなどによる消化器系の異常、感染症、腎臓病、心臓病、関節炎などあらゆる病気、あるいはケガでも起きるサインで、口内炎や歯周病など口腔内の疾患があれば、口の中に食べ物を入れると痛くて「食べたくても食べられない」状態になります。
「食欲不振」のみで、病気の種類を特定することは困難です。「それ以外の異変がないか」観察し、症状やいつもと違う様子がある場合は早めに動物病院に連れていき、獣医師に伝えましょう。
●嘔吐や下痢
●発熱している
●咳をしている
●飲水量の低下
●寝てばかりいる
●興奮している
●歩行中に足をかばうような動きをする
●食べたそうなのに食べない など
目に見えて痩せていくような場合も病気の可能性があります。目安ですが、3カ月以内に体重が5%減少するような場合は受診してください。
食べない理由2:強いストレスがあって
猫は自分のニオイが一切しない生活空間にストレスを感じやすく、引っ越しや、大掛かりなリフォームなどの際に、食欲不振になりやすいです。新たな生活で家具も一新したくなるかもしれませんが、猫用のトイレやキャットタワー、ベッドや毛布など、猫のニオイが付いているものは捨てずに残して、そのまま使えるようにしてあげるといいでしょう。
また、怖がりで繊細なタイプの猫に多いのが、「一時的なびっくりする出来事」が引き金となって、急性ストレス障害を起こすケースです。
●花火や雷雨、工事などの大きな音
●来客
●地震
などによる恐怖から、姿を隠して食事をとらなくなってしまうことがあります。このような場合、食べない状態が続くことで肝臓に負担がかかり、とくに太っている猫の場合、肝臓に脂肪がたまる「肝リピドーシス(脂肪肝)」という病気のリスクが増します。目安として1日〜1日半(24〜36時間)何も食べない状態が続く場合は、受診したほうがいいでしょう。
食べない理由3:食事や器が合わなくて
新しいキャットフードが苦手だったり、もともとそれほど好みではないフードであればちょっとしたきっかけで食べなくなってしまったり、器が気に入らなかったり、フードの内容や器が食べない原因となってしまうことがあります。食いつきの悪さが気になるようなら、以下のような方法を試して、食欲がアップするか確認しましょう。
●いつものドライフードに愛猫が大好きなウエットフードやおやつ、塩なしで茹でたササミなどをトッピングする
●尿路結石がない猫であれば、少量(1日にひとつまみ程度)のかつおぶしなど香りのよいものをドライフードに混ぜる
●ほかの味のフードにいきなり切り替えず、少量だけ分けたり、混ぜて与えてみる
●細菌が繁殖してニオイが残りやすいプラスティックの器から、陶器などの器に変えてみる(ステンレスは、寒さで冷たくなりすぎることがあるので注意)
●器のサイズを変えてみる。高さがあったり、ひげが当たりにくい幅広の器が食べやすい。
など
ただしおやつだけしか食べないような場合は、病気が関わっている可能性がありますので、受診を考えてください。
食べない理由4:食事場所に問題があって
複数飼いの家では、力関係が弱い猫が強い猫に遠慮したり、室内の広さに対して猫が多すぎても安心してその場所で食べることができなくなったりします。猫同士の関係性をよく観察し、仲が悪い猫同士では、食事場所を離したり、別々の部屋で与えるなど、飼い主さんが配慮しましょう。
また冬も本番になると、寒い場所へ行くのが億劫になって、食べなくなってしまうこともあります。食事場所が寒すぎないか、床が冷えすぎていないかをチェックしてください。とくに動きが鈍くなってきた高齢猫では、よく寝ているベッド等の近くに置いて食べられるようにしてあげるといいでしょう。
(記事監修:服部幸先生/東京猫医療センター院長)