おしっこの量が多いのは慢性腎臓病などのサイン。動物病院に相談しよう[獣医師アドバイス]
おしっこは出なくなったら大変、毎日出ていれば安心、と思われがち。けれども、おしっこが出ていても量が多いのは問題です。特に猫は高齢になってくると、腎臓の機能が低下する慢性腎臓病にかかりやすくなりますが、「おしっこの量が増える」のが典型的な症状です。泌尿器以外の病気が原因で増えることもあります。
猫の腎臓のメカニズム
おしっこは、腎臓で血液がろ過されてできる排泄物で、その時に取り除いたアンモニアなどの毒素や老廃物が余分な水分と一緒に体の外に出されます。もともと砂漠地帯で暮らしていた猫の腎臓は、少ない水分を最大限に活用して、おしっこの量が少なくなるように濃縮させる機能に優れています。けれども、猫の腎臓は体に対して小さく、おしっこをろ過するネフロンという組織も犬に比べて少ないので、ネフロンがだんだん減っていく慢性腎臓病にかかりやすい動物です。ネフロンは一度壊れると元には戻らないために腎臓の機能がじわじわと低下し、おしっこがうまく濃縮できなくなって、排泄される量が増えます。
また、腎臓そのものに異常がなくても、ほかの病気の症状で排泄されるおしっこの量が増えることがあります。
正常なおしっこの量は?
そもそも、猫の正常なおしっこの量とはどれくらいでしょうか? おしっこの量には個体差があり、食事の内容や運動量などによってかわってきますが、一つの基準として、体重1kgに対して50mLが1日のおしっこの量の上限だと考えられています。つまり、1日に体重3kgで150mL以上、4kgで200mL以上のおしっこが出ている時には、なんらかの病気の疑いがあります。
また、おしっこの量が増えると、色がうすくなってニオイもあまりしなくなってきます。おしっこがあまりにおわなくなってきたときも要注意です。
水を飲む量も確認しよう
おしっこの量が増えたときには、喉が渇き、水を飲む量が増えるはずです。固まる猫砂を使用している場合は、普段の固まりを覚えておきましょう。
また、水をたくさん飲むからおしっこの量が増えると自己判断して水を控えれば、体の水分が不足して脱水症状に陥ることもあります。いつでも、新鮮な水が自由に飲めるようにしてください。
おしっこが増える病気。中年以降の猫はとくに注意。
腎臓やホルモンに何らかの異常が起こると水を飲む量が増えて、おしっこの量も増えます。おしっこの量が増えるおもな病気には次のようなものがあります。
●慢性腎臓病
腎臓の機能が低下して水分の再吸収がうまくできなくなり、おしっこの量が増えます。体が水分不足になって頻繁に水を飲むようになります。
●糖尿病
血液中のブドウ糖の量が増えて尿にでるようになると、腎臓はそれを再吸収しきれなくなり、それと一緒に大量の水分が尿となって出るため、喉が渇いて多飲の症状がみられます。食欲はあるのにどんどんやせていくのが典型的ですが、太った猫の糖尿病も多くみられます。
●甲状腺機能亢進症
甲状腺の機能が活発になり、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて基礎代謝も血圧も上がり、活発になり、食欲が増えるのに体重は減少します。多尿と多飲の症状もみられます。
●子宮蓄膿症
子宮に炎症が起こって膿がたまり、熱が出たり、化膿したりすることで体の水分が浪費されて、水をがぶがぶと飲むようになります。お腹が張り、陰部から膿が出ることもあります。
※慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症、糖尿病などは、壮年期と呼ばれる中年以降の猫で増えてくる病気なので、中年〜高齢の猫では特に注意して観察しましょう。
早期発見のために健康診断を
多飲多尿の症状に気づいたら、動物病院で診察を必ず受けましょう。
慢性腎臓病はじわじわと進行していくので、多尿と多飲の症状に飼い主が気づいた時には、すでに腎機能の6割くらい失っている場合も少なくありません。近年では、血液中の「SDMA」という成分を調べることで、腎機能の低下も比較的早期の段階できるようになりました。早期発見のためにも、9歳以下は年1回以上、10歳を越えたら半年に1回は健康診断を受けましょう。
(監修:石田卓夫先生)