梅雨時に気をつけたい犬の病気と健康管理[獣医師アドバイス]

湿度が高く、じめじめしていて蒸し暑い梅雨時は、人も犬も体調を崩しがち。梅雨時の犬の体調の3大トラブルは「皮膚」「耳」「食中毒」ですが、ほかにも雨で散歩に行く回数が減ることによるストレスや、気温や気圧の変化による体調不良などもあります。
愛犬の健康管理をしっかり行って、梅雨時を元気に乗り切りましょう!

【皮膚トラブル】蒸れて菌が繁殖しやすくなる

全身を毛で覆われている犬は湿度が高い梅雨時は皮膚が蒸れやすく、皮膚のバリア機能が 低下します。細菌や真菌などが繁殖しやすくなるため、次の皮膚病にかかりやすくなります。

●膿皮症
犬の皮膚に普段から存在しているブドウ球菌などによって起こる可能性の皮膚病です。皮膚に常在するブドウ球菌は皮膚が健康であれば悪さを起こすことはありませんが、皮膚の抵抗力が低下したり体の免疫力が衰えたりすると、異常に増えて炎症を起こします。皮膚が部分的に赤くなり、かゆみが出るのが特徴です。

●マラセチア皮膚炎
正常な皮膚に普段からいるマラセチアという酵母菌(真菌の一種)によって起こる皮膚炎です。梅雨時の多湿によって増殖して赤みやかゆみが出ます。アトピー性皮膚炎などが原因で、皮膚がベタつくことで起こることが多くあります。同様に耳の中がベタつくと耳の中で増え、外耳炎を引き起こします。

●ノミアレルギー性皮膚炎
梅雨時から夏にかけては、ノミの繁殖が活発になってきます。ノミの唾液によってノミアレルギー性皮膚炎が起こり、赤い発疹と激しいかゆみが出て、背中からお尻にかけて脱毛することもあります。定期的にノミの駆除薬を投与してノミの寄生を予防しましょう。

梅雨時の皮膚トラブルを防ぐためには、ブラッシングやシャンプーをこまめに行って体を清潔にしておくことが重要です。シャンプーをしたら皮膚に湿気を残さないために、しっかりとドライヤーをかけて完全に乾かしましょう。

【耳のトラブル】たれ耳の犬は特に要注意!

コッカー・スパニエルやレトリーバー種のようなたれ耳の犬種や、プードルやミニチュア・シュナウザーのように耳毛が多い犬種では、梅雨時は耳の中に湿気がこもってじめじめし、「外耳炎」などの耳のトラブルが起こりやすくなります。
マラセチアは耳の中でも増殖しやすく、悪臭のある茶色の耳垢が出るのが特徴で、激しいかゆみを伴います。
また黒くて乾燥した耳垢が見られる場合には、耳ダニ(ミミヒゼンダニ)が寄生している可能性が考えられます。
耳をかゆがる、耳の中がにおう、黒や茶色の耳垢が出る場合には、動物病院に相談してください。

【食中毒】ドッグフードの保管状態にも気を配ろう

梅雨時は人と同様に、犬でも食中毒が起こりやすくなります。
食べ残しのドッグフードをいつまでも出しっ放しにしておくと、空気と触れてフードが酸化して傷んだり、細菌が増殖したりするので、犬がそれを食べてしまうと食中毒を起こし、下痢、血便、嘔吐などの症状が現れます。「また後で食べるから」とフードを出しっ放しにせずに、食べ残しは速やかに片づけましょう。一度に食べきれる量を与えることも大切です。きれいに洗った清潔な食器でごはんを与えてください。
またドッグフードやおやつの保管状態が悪いと、酸化が進んだりカビが生えたりすることがあるので、高温多湿の場所を避け、密閉容器に入れてしっかりと保管しましょう。

【運動不足】散歩に行けないストレスは室内遊びで解消

雨が多い梅雨時は、散歩に行けない日が何日も続くことがあります。室内に閉じこもりっきりでは運動不足になったり、退屈して犬もストレスがたまったりします。オモチャを与えたり、「引っ張りっこ」や「持ってこい」など飼い主さんと一緒できる遊びなどを取り入れたりして、愛犬が気分転換できるように工夫してください。
健康チェックの面からも体を撫でたりマッサージしたり、スキンシップの時間を増やすのもよいでしょう。

【温度と湿度】そろそろ熱中症にも気をつけて

梅雨の時期は蒸し暑いと思ったら梅雨寒と呼ばれるように急に肌寒くなるなど、気温や気圧の変化が激しいため、体調に負担がかかり、なんとなくだるくなったり、体調をくずしたりしがちです。また気温が高くなくても湿度が高いと体温調整も難しく、熱中症にもかかりやすくなってきますので、特にパグやフレンチ・ブルドッグなどの短頭種は注意しましょう。
犬が快適に感じる環境は、温度が21〜25℃、湿度が50〜60%くらいだといわれています。梅雨時は、エアコンの除湿モードなどを上手に利用して、室温25〜26℃、湿度50%くらいに保つことで、犬も快適に過ごすことができます。
梅雨時に起こりやすい体調の変化をよく理解して、異変がみられたら動物病院に相談しましょう。

(監修:石田卓夫先生)