水はたくさん飲んでいれば安心?飲む量が増えてきたらなんらかの病気のサイン[獣医師アドバイス]
動物の体は70%が水分でできています。水は動物が生きていくうえで欠かせないものであり、たくさん飲んでいる分には問題ないと思いがちです。けれども、飲む量が急に増えたり、頻繁に飲むようになったりしたら、なんらかの病気が疑われます。
常に大量に飲むときは要注意
犬は健康でも散歩から帰ってきたときや暑いとき、味の濃いものを食べた(人間の食べ物はおすすめしません)ときなどに水を飲む量が増えることがあります。また、ウェットフードよりもドライフードを中心に食べている犬のほうが日頃から水をたくさん飲む傾向にあります。
けれども、たっぷり水を与えていても、すぐに水入れが空になってしまうくらい、しょっちゅう大量に水を飲む場合にはなんらかの病気の疑いがあり、注意が必要です。
犬の飲水量ってどのくらい?
そもそも、犬は1日にどれくらいの水を飲むのでしょうか。それを把握していないと、飲む量が増えたかどうかの判断がつきません。水を飲む量にはやや個体差もあり、ドライフードかウェットフードかなど食事の内容によっても変わってきますが、犬の正常な1日の飲水量は体重1kgに対して50mL以下が一つの目安とされています。つまり、体重5kgで250mL以上、10kgで500mL以上、30kgで1.5L以上飲む場合は、異常な飲水量だと考えられます。
飲水量が増える原因は
飲水量は、のどの乾き、おしっこをつくる腎臓の機能、腎臓の働きを補助するホルモンの働きなどが大きく関わっています。腎臓やホルモンに何らかの異常が起こると水を飲む量が増えます。水を飲む量が増えるおもな病気には次のようなものがあります。
●糖尿病
血液中のブドウ糖の量が増えて腎臓が再吸収しきれなくなり、それに伴い大量の水分が尿として出るため、のどが渇いて水をたくさん飲むようになります。食欲はあるのにどんどんやせていきます。
●クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
体をしゃきっとさせて食欲も上げるホルモンを分泌する副腎皮質の機能が過剰に働くと、腎臓で尿の濃縮ができなくなり、おしっこの量が増加し、結果的に水を飲む量が増えます。プードルやダックスフンド、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、ボストン・テリアなどに多く見られます。
●尿崩症
おしっこの量が急激に多くなり、水を飲む量が増える病気です。脳の機能障害によっておしっこの量を調整する抗利尿ホルモンが正常に分泌されなくなる「中枢性尿崩症」が本当の病気ですが、クッシング症候群や高カルシウム血症のように腎臓での尿の濃縮が妨げられる「二次性の腎性尿崩症」というものもあります。
●慢性腎臓病
腎臓が徐々に壊れて水分の再吸収がうまくできなくなると、おしっこの量が増え、その結果体が水分不足になって頻繁に水を飲むようになります。
●子宮蓄膿症
メスでは、子宮に炎症が起こって膿がたまり、熱が出たり、化膿したりすることで毒素などが尿に出て、腎臓での尿の濃縮が妨げられます。その結果、尿量が増え水をがぶがぶと飲むようになります。お腹が張り、陰部から膿が出ることもあります。
※その他、高熱や熱中症などでも脱水するため、水をがぶがぶ飲みます。
合わせておしっこの量も確認
水を大量に飲めば、体の中の水分が過剰になっておしっこの量も増えます。水をたくさん飲むときには、必ずおしっこの量もしっかり確認してください。
また、自己判断で水をたくさん飲むとおしっこの量が増えるからと水を控えれば、体の水分が不足して脱水症状に陥ることもあります。いつでも、新鮮な水が自由に飲めるようにしてください。
多尿と多飲という症状に気づいたら、動物病院で診察を必ず受けましょう。
(監修:石田卓夫先生)