犬に合っている食事は?食べ方や体の特徴でわかった食性をもとに考えよう[獣医師アドバイス]
愛犬の食事を選ぶのに迷ってしまう飼い主さんは多いのでは? 食べ方や体を見れば犬に最適な食事が見えてきます。今回は犬の本来の食性をもとに考えてみましょう。
犬の食性や食べ方の習性
●犬の食性は「肉食性の強い雑食」
犬とオオカミは遺伝子が近く、食性もよく似ています。昔からオオカミは主に草食動物を獲物としてきたほぼ肉食性の動物です。犬は農耕を行う人と共に暮らすうちにデンプンを消化できるようになり、今では「肉食性の強い雑食動物」となっています。
●「早食い」「食いだめ」の習性は、野生時代の名残
オオカミは群れで狩りをしますが、獲物に毎日ありつけるとは限りません。そのため餌があるときにまとめて食べられるだけ食べ、さらに他の動物に取られないように素早く丸呑みするわけです。犬も同様に「食いだめ」「早食い」の習性が残っています。
食性は体の特徴にも表れている
●腸の長さはオオカミと人の間
動物の腸の長さを比べると、肉食、雑食、草食といった食性がわかります。消化吸収に時間がかかる繊維質を含む植物を食べる動物ほど、腸が長くなるからです。たとえば猫は体長の4倍、オオカミは4.5倍、犬は5〜6倍、人は10倍、牛は20倍。猫やオオカミがほぼ肉食、人が雑食、牛が草食となり、オオカミと人の間にいる犬は肉食性の強い雑食といえます。
●歯は肉食動物の形
肉食動物の歯はすべてとがっていて、獲物を捕まえるときに使う大きく鋭い犬歯、肉を噛み切るときに使う裂肉歯(第四前臼歯/先端が山型になっている大きな奥歯)が特徴。犬の歯も典型的な肉食動物の歯で、人の臼歯のように食べ物をすりつぶす働きはありません。
●唾液ではデンプンを消化できない
デンプンを糖に分解する消化酵素アミラーゼの有無も食性を見分けるポイント。雑食の人の唾液にはアミラーゼが含まれていて、咀嚼することでデンプンが糖に分解されます。しかしデンプンを食べる習慣のない肉食動物の唾液には、アミラーゼが含まれていません。肉食性の強い雑食の犬も同様で、デンプンの消化は腸のみで行われます。炭水化物の消化は人ほど得意ではありませんが、人との共生が始まってから食べ物を共有してきたので、現在もバランスよく摂取することが食性に合っています。
犬にとっての「おいしさ」とは?
●判断基準は、味より「におい」
犬は嗅覚の発達した動物なので、おいしさの判断基準は味よりも「におい」。食事の食いつきが悪いときは、温めてにおいを立たせると食べるようになることもあります。食欲不振が続く場合は動物病院に相談しましょう。
●甘味には敏感、あげすぎに注意
犬は味蕾(舌などにある味を感じる器官)が人の5分の1しかなく、味覚はそれほど発達していませんが、「甘み」には敏感です。とくに肉に含まれるアミノ酸の一部には甘みもあるので、肉食性の強い雑食とはいえ、肉には最も食欲をそそられるのでしょう。ただし肉以外の甘い糖質ばかり食べていては肥満へとまっしぐら。そもそも愛犬の健康を考えるなら、獣医師がすすめる優良なドッグフードの中から食事を選んであげることが大切です。
(監修:石田卓夫先生)