犬の祖先はどこからやって来た?幸せな関係づくりのために知っておきたいルーツと特性[ドッグトレーナーアドバイス]
犬を家族の一員として迎える方が増えています。つい人と同じように考えがちですが、犬は本来どのような動物なのか知っておくことが大切。互いに幸せな関係づくりのために確認しておきましょう。
犬の歴史をたどれば人との関係がわかる
●犬はオオカミと共通の祖先から生まれた
犬の祖先はオオカミと考えられてきましたが、近年の研究で、犬はオオカミと共通の祖先から分岐したことが明らかになりました。この祖先となる動物が約2万年前にヨーロッパで人と生活を共にし始め、犬になったという説が有力です。中東や中国という説、各地で同時多発的に始まったという説もあります。 日本には約1万年前の縄文時代にユーラシア大陸から人と一緒に移動してきました。
●共生のきっかけは人なつっこい性格
中でも警戒心が低く人なつっこい性格の個体が、人の食べ物をもらうために寄って来たことが共生のきっかけになりました。その後、人がより子供っぽい個体を選び繁殖していったことから、犬は幼い性質を残したまま成長するようになりました。大人になっても養護されたい犬と、幼い個体を養護したい本能的欲求を持つ人は、母と子の関係に似た関係性を築いてきました。
●擬人化せず、「犬」という動物を知ってつき合う
犬との暮らしは楽しいものですが、ときには飼い主さんにとって困ったことや思いどおりにならないこともあります。そんなときに「ワガママ」や「問題行動」と思い込んでいませんか?犬を擬人化するのではなく、「犬」という動物を知ってつき合うことが大切です。
実は犬が飼い主さんに訴えるのは、本能的な欲求が満たされないとき。赤ちゃんと同じく、お腹が空いたときや不快感を取り除いてほしいときなど、自分で欲求が満たせないので飼い主さん(保護者)に求めます。生きるために飼い主さんにサポートしてもらいたいと一生懸命。それが人と犬の関係の根幹にあります。
犬種によって違う特性とは?
●ローマ時代から犬種が生み出されていた
犬と人が生活を始めたときには、犬種という概念はなく、生活の中で必要とされた番犬、狩猟犬、牧羊犬さらには軍用犬としての仕事が与えられていました。選択交配をし、犬種を作り出したのはローマ時代になってからで、この頃には、すでに現代の犬種の原種といえるものがつくられるようになり、その特性や機能性が記録されていました。
一方、日本では「あるがままの犬」と共存してきたため、作業目的による犬種の作出はヨーロッパに比べるとあまり行われず、昭和になってから現在の日本犬6犬種が定められました。
現在では犬の能力や犬種特性をさらに活かして、盲導犬や警察犬に加え、災害救助犬、麻薬探知犬、がん感知犬、シロアリ探知犬、セラピードッグなど、多岐にわたる分野で活躍しています。
●犬の特性に合わせて日常生活に配慮を
愛犬の犬種がどんな目的で生み出され、どんな環境で育ってきたか、イメージを広げることが特性の理解につながります。海外原産の犬種でも、YouTubeなどの動画サイトを利用して、原産国の暮らしぶりを見てみましょう。
たとえば牧羊犬のボーダー・コリーは、広大な牧場で家畜をコントロールするため、視力、動体視力、聴力が優れています。動くものや音には敏感に反応しますが、逆に、目の前には焦点が合いづらいという特徴があるため、ストレスになることも。日本の都心や住宅街で暮らす場合は、飼い主さんが犬の特性を理解して生活環境に配慮してあげましょう。
犬は人の気持ちに共感し寄り添う唯一の動物
●飼い主を慰め、助ける能力
いくつかの調査や実験で、犬は泣いている人に対してより積極的に近づき、鼻をこすりつけたり、においを嗅いだりといったしぐさをすることがわかりました。
また、窮地に陥った飼い主さんを犬が助けに入るかどうかという実験では、半数以上の犬が助けようとしました。
落ち込んだときや悲しい気分のとき、犬がそばに寄り添ってきたことで慰められた経験をもつ人もいるかもしれませんが、人類最良の友と呼ばれている犬は、他の動物にはない、人の感情に共感して行動する素晴らしい能力をもっています。
今やコンパニオン・アニマルと呼ばれ、家族の一員になっている犬。もっとも古くから人が犬と生活を共にしてきたのは、彼らが人にさまざまな恩恵を与えてくれるからです。しかしその恩恵を受けるためには、飼い主さん自身も犬への理解を深め、信頼される存在になる努力が必要です。犬のルーツや特性をよく理解し、犬が求めていることを提供してあげることで、互いの絆を深めていきましょう。
(記事監修:鹿野正顕先生/スタディ・ドッグ・スクール代表)