食が細い、食べない、好き嫌いや食べムラ…食欲に関する悩みの原因と対処[獣医師アドバイス]

食欲は愛犬の健康のバロメーターの一つ。フードを残したり食べなくなったりする理由は、ワガママだけではありません。病気や老化などが原因になっているケースも多いので、愛犬の状態に合わせて対処することが大切です。

病気やストレス

●原因
今までと食べ方や食欲が変わってきたとき、まず疑うべきは病気やストレス。とくに嘔吐や下痢を伴い、元気がなく痩せてきた場合は、早急な対処が必要です。

●対処
動物病院を受診して、愛犬の健康状態や病気の有無を確認してもらいましょう。
病気ではなかった場合、ストレスによる食欲不振の可能性もあるので、犬の生活環境に思い当たる変化(引っ越しや新たな同居ペットの迎え入れなど)がないかチェックし、原因を突き止めて心のケアを行いましょう。

もっとおいしいものが食べたい

●原因
心身ともに元気なのにフードを食べない場合は、ワガママかもしれません。愛犬におねだりされて好物を与えたり、人の食べ物をおすそ分けしたりしていませんか?犬は「フードを食べなければもっとおいしいものをもらえる」と学習し、いつもの食事を食べなくなっていきます。
また、フードをいつでも食べられる状態にしている「ダラダラ食べ」も食べムラの一因になります。

●対処
ワガママへの対処は、犬との我慢比べ。朝晩の決まった時間にフードを与え、1時間経っても食べなければさっさと下げてしまいます。
健康であれば1〜2食抜いても問題ありません。お腹が空けば食べるようになります。

食への関心が低い

●原因
もともと食への関心が低く、あまり食べない犬もいます。痩せている場合は栄養不良にならないように食欲を増進させる工夫をしましょう。

●対処
・犬はにおいで食欲を刺激されるので、フードをレンジで人肌程度に温めてにおいを立たせたり(加熱し過ぎに注意)、鶏肉のゆで汁でふやかしたりしてみましょう。
・ウェットフードや好物をトッピングすると嗜好性を高められます。おいしい部分だけ食べないように、フードとよく混ぜるのがコツです。
・フードの好みが変わったりあきたりすることもあるので、フードの種類を変えてみるのも一案です。
・おやつの与え過ぎや運動不足で空腹を感じていないことも。おやつを控えて散歩を習慣にするだけで食欲が改善するケースもあります。

成長期が終わった

●原因
生後7〜8カ月になると身体の成長が落ち着いてきて、成長に必要なエネルギーが不要になり、食べる量が減ってくるのは自然なことです。

●対処
この時期の食欲低下は心配ないケースが大半で、むしろ心配しすぎて愛犬が喜ぶ嗜好性の高いものばかり与えるほうが問題。どんどんフードを食べなくなっていくので要注意です。

老化に伴う体の衰え

●原因
犬も10歳前後の老齢期になると消化吸収能力が衰えたり、運動量が減ったりして、食が細くなりがち。体重を維持できるよう食への関心や食欲が低減しないようにするのがポイント。

●対処
・消化器に負担をかけず、必要な栄養素がしっかり摂れるハイシニア用フードへの切り替えを。
・歯周病などで愛犬が食べづらそうにしていたら、フードをお湯でふやかしたり、柔らかいウェットフードに変えたりして食べやすく。
・食欲を支える嗅覚が衰えるので、フードを温めてにおいを強くする工夫もおすすめ。
・筋力の低下により、足を踏ん張って首を下げる食事姿勢がつらくなることもあるので、食事台で食器の高さを調整します。

「フードを食べない」「食が細い」といった犬の食欲の変化にはさまざまな理由が考えられます。動物病院に相談しながら原因を突き止めて、適切に対処しましょう。

(監修:石田卓夫先生)